『燃ゆる女の肖像』

f:id:knockeye:20201206101245j:plain
燃ゆる女の肖像

 『燃ゆる女の肖像』について。
 『水の中のつぼみ』のセリーヌ・シアマ監督とアデル・エネルが再び。
 アデル・エネルは『ブルーム・オブ・イエスタディ』で憶えていたので、ドイツ人だと思っていた。振り返ってみれば、『午後8時の訪問者』も観ていたので、そのときに気づいてもよかった。父親がオーストリア人だそうだ。
 18世紀の女性画家とモデルを主人公にしたオリジナル脚本。その頃の女流画家と言えば、マリー・アントワネットの宮廷画家だった美貌のエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランが有名だが、それ以外にも多数の無名の女性画家がいたことに気づいて、このシナリオが生まれたそうだ。
 オルフェウスとエウリディーケの神話についての女同士のおしゃべりがコアになっている。オルフェウスは、もう少しで冥宮からの出口というところで、エウリディーケを振り向いてしまったために、彼女を冥宮に取り戻されてしまう。
 セリーヌ・シアマ監督とアデル・エネルはこの映画のクランクイン前にパートナー関係を解消したそうだ。そういうパーソナルな体験が脚本に反映されている。
 女性同士の恋愛映画としてケイト・ブランシェットルーニー・マーラの『キャロル』が話題になったが、こちらの方が断然よいと思う。画家とモデル、監督と女優、恋愛の破局とその後の関係が、作品に昇華されているのはさすがだと思った。
 というか、おそろしいほどに思った。関係を解消した同性愛のパートナーを、その関係を思わせる映画の主役に配して、そういう背景を全く知らない観客を感動させる恋愛映画に仕上げてしまう、その芸術家の業を思った。
 上にあげたキービジュアルは、公式サイトのものだ。これだけで観てみたくなった。その他の情報は後から知った。

gaga.ne.jp