今年、映画館で観た映画の中からオススメしたい映画をあげておきたいと思います。お正月休みの間にでもご覧になられたらと思います。
まず、アメリカの映画から。
行き止まりの世界に生まれて
映画を志して子供のころからとりためていた映像が、ラストベルトと言われる街が舞台であったために、たまたま映画になった奇跡のような作品です。
SKIN/スキン
USA全土に無数にあるという差別団体の内部を描いた実話です。そこに吸い寄せられていく若者の閉塞感もよくわかるし、日本会議とか在特会とかの病巣を抱えているわたしたちも他人事だとは思えない作品でした。ダニエル・マクドナルドが素晴らしかった。
リチャード・ジュエル
クリント・イーストウッド監督作品。アトランタ五輪の爆破事件、およびそれにまつわる冤罪事件を描いているのですが、この2年前に日本では松本サリン事件があり、ほぼ全く同じ構造であるにもかかわらず、その後の日本のマスコミは謝罪も補償も一切していません。
ジョジョ・ラビット
スカーレット・ヨハンソンがこの映画でアカデミー賞を獲れなかったのには驚きました。
ルース・エドガー
アメリカで移民として生きることの孤独さに真摯に向き合った作品で、差別と無関係でいられる人はいないと思い知らされます。
ビッグ・リトル・ファーム
自然農法の農園を始めた夫婦のドキュメンタリー。
ワンダーウーマンは、アニメキャラでありつつ、西欧の古典古代に直接結びついているので、いかようにも再生産できる。ガル・カドットの容色が衰えない限りですけどね。
マザーレス・ブルックリン
エドワード・ノートン初監督作品。
幸せへのまわり道
mid90s
ジョナ・ヒル初監督作品。
つぎに、アメリカ以外の外国語映画。
ポルトガル,夏の終わり
個人的には、この映画が今年のベストでした。
燃ゆる女の肖像
監督も女優もリアルにレズビアンで過去には現に交際関係もあったわけですが、それをストレートにではなく、18世紀の女性画家とモデルの関係におきかえたことでストーリーにに深みがくわわってます。
ある女優の不在
イラン国内で映画製作を禁じられているジャファル・パナヒ監督がなんだかんだで撮った映画のひとつで、そういう手かせ足かせのためにかえって輝いて見える作品。
テネット
毎度、色んな議論をまきおこすクリストファー・ノーラン監督作品。私は、『ダークナイト』は大したことないとかいう部類の人なんですが、これは文句なしに面白いと思いました。
少女は夜明けに夢を見る
イランの少女の刑務所?、留置場?、そういうところのドキュメンタリーですけど、日本の不法移民収容所なんかよりはるかに人道的でショックを受けると思います。メヘルダード・オスコウイ監督は、フレデリック・ワイズマンのワークショップに参加したこともあるそうです。
白い暴動
パンクが80年代のイギリスにとっていかに重要なカルチャーだったかがよくわかる。
ランブル
ジミ・ヘンドリックスも、ヒューバート・サムリンも、マディ・ウォーターズも、ロビー・ロバートソンも、ネイティブ・アメリカンの血を引いていたという驚き。
エクストリーム・ジョブ
韓国映画の底力を思い知らされる痛快コメディ。
フランスのNGOの奮闘ぶりを明るく描いた実話。
オーバー・ザ・リミット
ロシアの新体操界の内幕を描いたドキュメンタリー。実在した『セッション』みたいな紹介のされ方をしているけれど、日本人は西欧のひとたちとはまたちがう受け止め方をするだろうとおもえて、自分たちの立ち位置を確認するにも面白い映画。
さいごに、日本映画。
ラスト・レター
これは、『パラサイト』とほぼ同時期に観て、岩井俊二監督の繊細なリリシズムに感動した映画。岩井俊二自身の筆による原作小説も読んだし、それをもとに岩井俊二が中国でメガホンをとった『チィファの手紙』も観たけれども、その最終形態であるこの映画がいちばん出来がいいみたいのにも感動した。森七菜のデビュー作。
生きちゃった
これは、今年観た映画のなかで『ポルトガル、夏の終わり』に次いで感動した。特に、日本語のコミュニケーションについての映画的な洞察がすばらしかった。
滑走路
ことしの日本映画ではこの3作は甲乙つけがたい。でも、脚本はこれがいちばんかも。大庭功睦監督のデビュー作『ノラ』もAmazonプライムで観て、染谷将太がどうして足を引きずっていたのかわかった。
37seconds
日米合作映画。Netflix効果。主役の桂山明って人のお芝居が素晴らしい。
さよならテレビ
これと『はりぼて』と『君はなぜ総理大臣になれないのか』を連続してみると、マスコミと政治について、間違った期待を持たずに済む。
右と左でともに政治的実力行使に及んだはずの両者が、この対話の場で、政治について何も語り合っていないっていうことが、どっちにせよひどく日本的で、このことがその後の日本の政治から、若者の行動の機会を奪ったと言えるかもな。
喜劇 愛妻物語
コメディーではこれがNO.1。タイトルは新藤兼人の『愛妻物語』へのオマージュらしい。
浅田家!
東日本大震災をえがくってときに、ここに着地する中野量太のオリジナリティに感服。菅田将暉ってすごいなと思った。
- 作者:中野量太
- 発売日: 2020/08/07
- メディア: 文庫
初恋
タイミング的に、コロナ禍でいちばん割を食った映画。日本映画、お金がねえなあと悲しくなるけど。
ミッドナイトスワン
草彅剛がこれを演じてるのがすごい。服部樹咲と上野鈴華が素晴らしい。
以上です。
「初恋」のクライマックスシーンを、三池崇史監督のイメージ通り実写映像化出来なかったことに、日本映画の衰退を感じました。世界に市場を広げてこなかった興行の怠慢でしょうね。