『真夏の夜のジャズ』4K修復版

 今年最初の映画が『真夏の…』っていうのもどうかと思いつつ、しかし、この正月は、去年のコロナ禍で準備が追い付かなかったってことなんだろうと思う。『ワンダーウーマン1984』はもう観ちゃったけど、それにしても、延期延期でようやく封切りされたのだし、『鬼滅の刃』が独り勝ちするのも、正直いって対抗馬がなさすぎるせいもありそう。
 1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルを撮った映画なんだけれども、この映画を観ていると、この国のどこに人種差別とか格差とかがあるの?と聞きたくなる。
 演者も観客も白人と黒人が入り混じってるし、このずっとあとに、ビートルズアメリカ公演のとき、白人と黒人の観客席が分けられていることに彼らが抗議して辞めさせたのだが、いったい、アメリカって国はどうなってるのか、わけがわからない。
 音楽と関係ないことを先に書いておくと、1958年のこのころのアメリカには太っている人がほとんどいない。
 まあ、演者のビッグ・メイベル・スミスとマヘリア・ジャクソンは、今の基準からみても太っていると言えるだろうけれど、観客のなかには、太ってる人が全然いない。
 海辺のシーンなんかで、「太ったおじさん」という意味合いで映してるんだろうなっていう人がいたけれども、今日的な基準に照らすと健康的といっていいとおもう。
 この後の60年間で、アメリカの食糧事情に何らかの変化があったことは一目瞭然だと思う。遺伝子組み換え食材がマジでまずいって、視覚的にわかるって意味でも、映画と全く関係ないんだけど、こないだ『フードインク』とかそんな映画を観た所だったから、まずそこに驚いてしまった。
 セットリストとかは公式サイトにあるので、参考にしてもらうとして、やっぱり、ルイ・アームストロングが圧巻だった。
 セロニアス・モンクなんかはカリスマだけれども、フェス向きじゃないのがよくわかる。『BLUE NOTE RECORDS BEYOND THE NOTES』みたいなドキュメンタリーで蘊蓄を聞きながらでないとちょっと入ってこないかんじなんだけど、ルイ・アームストロングは、会場全体を巻き込んでいく。
 アニタ・オデイの昼のパフォーマンスもよかったけれど、だんだん夜が更けてきて、ビッグ・メイベル・スミス、チャック・ベリー、チコ・ハミルトン、ルイ・アームストロング、マヘリア・ジャクソンって流れが最高だった。
 配信でも観られるらしいのでそれもありかも。