バカリズムが脚本を書いた『地獄の花園』を観ました。WOWOWのドラマを映画化した『殺意の道程』をなんか、たぶんコロナ禍で、見逃したので、これは観たいと思ってたのだけれど、「何なの?、この映画?」って感じがして『殺意の道程』ほど乗り切れない気がしてたんだけど、星野源のオールナイトニッポンを聴いてたら、監督の関和亮が出てて、感じが良かったので気が変わって観にいきたくなった。星野源のMVを撮ってる人ならセンスが信用できるんじゃないかって、そう思えるくらい星野源の存在は、考えてみれば大きくなってるんだね。
もうほとんど上映が終わりかけてるくらいだけど、これは観てよかった。永野芽郁、広瀬アリス、菜々緒、大島美幸、小池栄子なんかが出てる、「OL版の」クローズゼロとか、ビーバップハイスクールとか、その手の古典的「男の子マンガ」のパロディなんだけど、そもそも、男の子の不良モノが限りなくファンタジーに近いじゃないですか?。ファンタジーじゃない場合、たいがい本職になる方達で、そうなるとそれはそれで別のジャンルになるから。
だから、その舞台を学園じゃなくて一般企業にして、登場人物を学生じゃなくてOLにしても成立するって発想は、さすがバカリズムだと思った。それに、今、「OL」って存在自体がファンタジーになりつつある。というか、女性社員を男性社員と区別して「OL」と呼ぶ感覚自体がまずいんじゃないかって思われる時代だし、そのファンタジー具合は、ケンカに明け暮れてる不良学生とほとんど同価くらいになってるって感覚がするどい。SDGs的とさえ言える。
だって、マンガみたく、ケンカに強い高校生で、しかも、さっき言ったみたいにプロの道に進まないっていう漫画の主人公みたいのがもしいたとしたら、そういう人って社会に出たら、OLと同じくらいの立ち位置になりません?。
だから、この映画の設定、案外とすんなり入ってきた。バカリズム自身がチョイ役で出てるんだけど、そういう会社の上司みたいな人には、OL同士の「きったはった」とは、別のチャンネルで対応するのがすごく可笑しかった。それって「ケンカに明け暮れるOL」じゃなくて、普通のテレビドラマのOLでもありうるシーンだからな。それがリアリティに寄与してだれさせない。
でもホントに、バカリズム自体が、地元じゃそっちだったらしく、芸人になるって時にまずやったのが、筋肉を落とす事だったっていうのは、「にけつ!」にゲストに来た時に話題になってた。
で、そこまでは、出オチに近い話だと思うんだ。「こんなのOLはいやだ」っていう大喜利のひとつみたいな。だけど、その先の展開が、やっぱりバカリズムってすごい才能なんだと納得させられた。作家のオークラさんがライバル視してるっていう芸人だけのことはある。
「そんな設定ある?」ってところから始まって、「ありかも」ってくらいにマジで引っ張って、「マジかよ?」ってひねりを加えて、最後にスコッて落とした。
さっき書いたみたいに「OL」って存在自体がそれはそれで別のファンタジーだから、そっちはそっちで別ジャンルの定型のストーリーが世にあふれてるわけじゃないですか?。
最初に不良モノってファンタジーをOLの世界に転生させつつ、実は、OLって世界もこんなファンタジーですよねってオチにつなげて見せたのはホントにすごかった。
同じくバカリズムの『架空OL日記』も未見なんだけど、そっちの経験が生きてるのかもしれない。
たとえば、東京03がサラリーマンのコントをやってるじゃないですか?。でも、あの人たち全然サラリーマンのことなんか知らないんだよね。だから、「不良」とか「OL」とか「サラリーマン」とかホントに存在してるの?って話は、実は笑い話でもないってこと。
こないだ書いたけど、難民問題が日本でイマイチ盛り上がらないひとつには、日本人の人権意識が低いってこともあるかもしれないが、難民のイメージの問題なんだろう。その時も書いたけど、あのときのはてなブックマークのコメントに「毎日新聞の社屋に難民を住まわせろや」みたいな。難民はホームレスじゃないから、普通に生活しますから。ただ、困難なことは多々あるに決まってるので、そこは手助けするのが政治が存在する意味だから。それは難民問題だけでなくて、他の問題と同じなんで、国連で名指しされるほど異常な対応を、する役人も、それを支持するはてな民も、そのヒステリックな対応は、その人たちの難民って固定観念にあるんだろうな。それと「日本人えらい」って、日々繰り返される刷り込みもこういうところに無意識にでてくるんだろうな。
話を元に戻すと、今の女優さんたちは、マンガフリークを自負する広瀬アリスだけでなくて、マンガネイティブの人たちばかりで、菜々緒にしても、あんなスタイルいいモデルさんみたいなのに、コメディエンヌとして達者だわ。『オー!マイ!ボス!恋は別冊で』でも片鱗をみせてたけど。
敵方のOL役に遠藤憲一、勝村政信、丸山智己が女装して出てたんだけど、全員女優さんでやってほしいと思ったくらいだった。ありえなさの演出として、あの配役を男性にしたのはすごくうまいと思いつつ女優さんたちが生き生きしてたのでついそう思ってしまった。
コメディーができる女優さんって昔はなかなかいなかった。いまは、少女マンガの質が上がったのが大きいんだと思う。
それから、室井滋と広瀬アリスのからみが(笑)、あの転調がホントに上手いと思った。