『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』

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都営霞ヶ丘アパート

 以下のグラフはこの夏のコロナ感染者数。

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コロナ感染者数推移

 東京オリンピックの会期が7.23〜8.8なんだけど、この感染者数の推移とほんとに何の関係もない?。
 もちろん、何のエビデンスもない。オリンピックの会期に見事に増加したなあと思うだけですけど。
 今度、というか、もうすでに東京の一部の映画館では上映が始まっている『ボストン市庁舎』の監督、フレデリック・ワイズマン町山智浩がインタビューしていた。


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 フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリーには『ジャクソン・ハイツ』で魅了された。じきに最寄りの映画館に来るのでぜひ観たい。
 青山真也監督の『東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート』は、フレデリック・ワイズマンじゃんと思わせる。厳密に言えば、フレデリック・ワイズマンほど徹底していない。インタビューカットもあるし、BGMもある。が、フレデリック・ワイズマンを観たことがある人には通じるだろうと思う、ドキュメンタリーを撮るに当たっての覚悟みたいな点で似ていると思う。
 都営霞ヶ丘アパートには驚いた。1964年のオリンピックのために強制的に立ち退かされた住民が、2021年のオリンピックのためにまた強制退去させられたのだった。
 小林信彦が、1964年のオリンピックのことを「町殺し」と呼ぶのだけれども、その実態の一部がよくわかった。
 住民のコミュニティをしらみ潰しに潰し続ける行政。それが、60年間続いてきたって証拠でもあるわけだった、このオリンピックは。
 前にも書いたけど、「日本、家の列島」という日本のユニークな個人住宅建築を集めた展覧会が世界を巡回して話題になったことがあった。日本の個人住宅は、国際的な基準に照らして極めてユニークなのだそうだ。中でも衝撃的だったのは、壁を高く築いて隣家との接触を拒絶しつつ、角の祠に植っている桜の木だけが見えるように、その方向だけ壁を切り落としている家。
 その祠が、かつてそこにあったコミュニティの痕跡に違いないことを思うと、なんともグロテスクとしか言いようがない。
 歴然とした地域コミュニティの喪失を目の当たりにしつつ、建築の面白さなんかに興じていられる建築家っていったいどういう生き物なんだろうと、変種のマッドサイエンティストを見るような思いがしたものだった。
 この映画で、いちばん愕然としたのは、NHKの取材班が、番組の事前取材できているのをたまたまなのかどうか知らないが、捉えた映像だった。
 記者らしい女性が住民の一人暮らしの女性に「反対ということは言えないんですけれども・・・、」と何度も念を押すのだ。わたしには誘導としか見えなかった。「反対と言わないでください」ではなく「言えないんです」と言うのがいやらしかった。


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