ウィル・スミスのビンタ事件について

 今更なんだけど、ウィル・スミスがアカデミー賞受賞式でやらかした事件について。
 他で誰も言ってないので、ひとこと不確かな情報を付け加えておく。
 アカデミー賞の式典で、自分の奥さんの髪型をネタにした司会者を殴った、ウィル・スミスの行動の是非について云々されているのだけれども、私の記憶では、ウィル・スミスはそもそも、ふだんの撮影現場でも、あの手の行動で知られていた。
 その記事を検索してみているのだけれども見つけられない。映画『MIB 3』のパンフレットで読んだのかもしれない。
 インタビュアーがジョシュ・ブローリン
「ウィル・スミスに◯◯◯されたか?」
と尋ねた。◯◯◯の部分には「殴られた」とか「悪戯された」とかの言葉が入る。その辺の記憶が曖昧。ただ、記者がそう尋ねるということは、ウィル・スミスのその行動は関係者には有名だったことがわかる。
 これに対してジョシュ・ブローリン
「俺の顔を見ろよ。ゴツすぎて近寄れなかったんだろ。」
と答えていた。つまり、ウィル・スミスはジョシュ・ブローリンにはそういう行動を取らなかったし、ジョシュ・ブローリンは記者のその話にのらなかった。
 記憶が不確かすぎるのだけれども、それを読んだ私は、ウィル・スミスってそういう男子校の「一軍男子」みたいなコミュニケーションの取り方をする人なんだなと、ちょっと意外に思った。つまり悪ノリした時の石橋貴明のようなイメージ。
 
 さて、何が言いたいかというと、アカデミー賞受賞式で、ウィル・スミスが人を殴ったと聞いて、私は「やっぱりそうか」と思った。『MIB 3』の時に覚えた疑惑に対して物証が得られたって感じ。
 日常的に暴力をふるってる人でなければ、あんな場でとっさに手は出ない。ふだん人を殴りなれていない人は想像してほしい。スポットライトを浴びたあんな場所で人を殴れるかどうか。私なら、もし殴りたいと思っても殴れない。
 ふだん不満を飲み込む人なら、あそこでも黙ってしまっただろう。ふだん、不満を言葉で抗議する人ならあの場でもスピーチで異をとなえただろう。ジョークのうまい人ならあの場でもジョークで切り返したに違いない。
 でも、ウィル・スミスは暴力を選んだ。それはふだんの彼がそうしてきたからだ。ふだん人を殴りなれていない人でなければ、あんな程度のジョークで人を殴れない。
 クリス・ロックのあのジョークについては、爆笑問題太田光さんがラジオで解説して、怒るようなことじゃないし、むしろウィル・スミスの方が奥さんに怒られるんじゃないかと言っていた。町山智浩さんもYouTubeで、あのジョークはすくなくとも侮辱には当たらないと言っていた。
 つまり、あの時、ウィル・スミスがなぜクリス・ロックを殴ったのかといえば、それは、ウィル・スミスがふだんから人を殴る癖があったからだというのがいちばん正しいように思える。
 そして、ウィル・スミスのその奇行がどんな深層心理から来ているのかは、もっと掘り下げてみないとわからない。
 日本では、ウィル・スミスのビンタを称賛する人が多いそうだ。日本人が如何に日常的な不満を溜め込んでるかってことだと思う。そしてその解決法として如何に言語を信用していないか、言い換えれば、反知性的かがよくわかる。
 ジョークは確かに知的な作業であり、昨今のM-1とかキング・オブ・コントの盛り上がりは、そういう反知性的な風潮に対するカウンターと見ることができるかもしれない。
 
 
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