『ベイビー・ブローカー』ネタバレあり

 是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』の何にいちばん驚いたかといえば、ソン・ガンホ演じる主人公の結末である。
 ところで、最近はこうしたブログなどでもあまりネタバレを気にしなくなっているそうだ。というのは、ネタバレを含む考察を頭に入れてから観たほうが、むしろ深い鑑賞ができるという人が増えたそうらしい。一理あるとは思うが、考察はあとから見てもいいわけなので、この記事も作品鑑賞前には見ない方がいいかも。
 ほぼ全員が何かの犯罪を犯しているこの映画だけれど、その中でいちばん罪に問われそうにない、赤ん坊の父親の嫁さんが、いちばん冷たく見えるのに対して、いちばん重い罪を犯す主人公がいちばん熱く見える。
 全て丸く収まったかに見えるラストに、主人公だけはどうやら人を殺して姿をくらましたらしい、その苦味を一味加えるところが是枝裕和の優れたところだろう。「はい、おしまい」とはさせてくれない。観終わった後も考えさせられる。