『さかなのこ』ネタバレかも?

 のんは29歳だそうだ。この映画では男子用の学生服、いわゆる学ランを着てさかなクンを演じている。のんがさかなクンを演じると聞いて、主人公を女性にしたんだなと思い込んでいたけど違った。これはすごいキャスティング。別に、男っぽくふるまおうとすらしていない。髪型ものんのままだし。
 インタビューによると、のんはこの主人公をロバート・ダウニーJr.の「アイアンマン」や「シャーロック・ホームズ」のようなヒーローとして捉えていたようだ。
「『アイアンマン』も『シャーロック・ホームズ』(ガイ・リッチー監督)も好きなんです。ああいう「才能があるんだけど子供っぽくて嫌なやつ」だけど、それでいてヒーローのポジションというのがいいなと思うんです。立ち位置的に、ミー坊はヒロインじゃなくてヒーローじゃないですか。」
 この役の捉え方が天才的だと思った。ちなみに「ミー坊」というのがのんの演じた主人公で、この名前がまた男とも女ともとれるようになっているが、ミー坊は子どもの頃、さかなクン自身が演じる(したがってさかなクン以外ではありえない)「ギョギョおじさん」に出会う。さかなクンさかなクンに出会うわけで、なので、このミー坊は男でも女でもさかなクンでもない、のんのさかなクンとして暴走し始める。しかし、にもかかわらず、ほぼ実話らしいので驚く。 
 柳楽優弥、磯村悠斗、岡山天音たち高校時代の悪友たちとの交流は、確かにフォレスト・ガンプを思わせる。夏帆との再会とかも。
 舞台挨拶で、のんは沖田修一監督のことを「えいがのこ」だと言ったらしい。奇しくも、このミー坊は沖田修一監督自身であったのかもしれない。インタビュアーに「のんさんは何のこなんですか?」と聞かれて「えんぎのこ」ですと即答している。
 テレビに出ることになったミー坊を、旧友たちや、母親や、父親や、そして、さかなクンが演じるギョギョおじさんが、それぞれのテレビで見る。なんか、あしたのジョーホセ・メンドーサ戦を思い出させた。
 でも、ミー坊は結局、さかなになって泳いでいく人なのだ。この人はそうでしかありえないって感じは『横道世之介』に共通している。あのときの吉高由里子の変貌ぶりみたいな、独特のリアリティを持っている監督さんだと思う。このオリジナリティがあるかないかだなぁと。
 余談ながら『グッバイ・クルエル・ワールド』って映画を観たんだけど、8回裏まですごくいい試合をしていたのに、9回に大味になったような気がした。リリーフ投手が炎上した裏に味方が三者凡退したみたいに、最後にフツーになっちゃった。8回裏まで良かったから後味は悪くないが「詰めが甘いよなぁ」と思いながら帰路に着くことになる。『ブレット・トレイン』と同じ日に観たので、さらにそんな気になる。『ブレット・トレイン』ははちゃめちゃなんだけど、覚悟を決めた感はある。どちらもプロットよりキャストのキャラクター重視の映画なわけだから、キャストの退場にもっと見せ場を用意できたろうって気がした、エンターテイメントとして。あのオチだと、山上徹也が安倍晋三の心臓をぶっ飛ばす現実に勝てない。
 三浦友和玉城ティナ宮沢氷魚・・・みんなよかったんだけど、ラストだけ甘く見える。これは『ブレット・トレイン』もそうだけど、悪役がうまく処理できていない。何が悪か見えにくい時代かもしれない。安倍晋三の悪、ネトウヨの悪は、しょぼすぎて腹が立つくらい。安倍晋三はあそこまでしょぼすぎるなら殺してよかったと思う。統一教会創価学会日本会議にへつらいながら、民主党にやじを飛ばしてた。今思い返すとそれがすべてだった。
 しょぼい悪に腹立ててる若者の宮沢氷魚玉城ティナと、世の中をひっくり返してやろうとしている年寄りの三浦友和って構図は新しかったと思う。だから、この2組の処理が煮え切らなかったように見えちゃうんだろうな。余談でした。
 ちなみに、岡田斗司夫が『さかなのこ』は今年のベスト5にはいるけど何がいいか説明できないと言ってました。
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