ウクライナ戦争とイランのデモ

 イランとの核合意は、オバマの数少ない外交成果の一つだったのに、トランプが勝手に降りてしまった。イランのドローンがロシアに提供されている今の事態にそれが繋がってないとは言えない。
 しかし、逆に言えば、アメリカがイランとの関係で手厚い対策をとれば、少なくともウクライナから手を引かせることは可能じゃないだろうか。オバマ時代には合意に達していた訳だし、そこに立ち戻るには、トランプをコケにするだけでいい訳だから、何も躊躇する必要はないだろう。
 ただ、マフサ・アミニさんの死をきっかけに始まった抗議活動をイランが交渉に絡めてくると、話がややこしくなる。
 「我々のイランへのメッセージは非常に明確だ。国民を殺すのをやめ、ロシアがウクライナ人を殺すのを助ける兵器をロシアに送るのをやめよ」と、ジャンピエール報道官がホワイトハウスの記者会見で述べたそうだ。
 つまり、これは、米国はこの2つの条件をクリアすれば、イランとの国交を再開できるというメッセージでもありそうだ。
 マルジャン・サトラピの一連のマンガを見ると、1978年のホメイニ革命まで、非イスラム化していた経験は大きくて、ホメイニ革命が全国民に支持されているわけではないことがわかる。
 それに、なんといってもイランは歴史が古い国で、イランの歴史に比べると、イスラム教なんて新興宗教みたいなものだという感覚があっても不思議ではない。イラン人にとってはイスラム教を絶対視しない素地はあると思う。
 今、米国とイランが国交を回復すれば、ロシアにとっては、ウクライナに手出ししたせいで、NATOが国境に迫るわ、中東方面の抑えもぐらつくわという形勢になるわけだから、米国としては、イランと国交回復して、東と南の両方からロシアを締めつけたいところだと思う。
 イランの政権がバカでなければ、ウクライナとロシアが戦争している機会に米国との国交を回復したいはずだ。誰が考えても、今、アメリカをとるか、ロシアをとるかで、ロシアをとる亡国の選択はないだろう。
 だから、普通なら、この千載一遇のチャンスを逃さないはずだが、宗教が絡んでくると、訳のわからん選択をする可能性もある。ロシアも必死にイランを繋ぎ止めようとするだろうし、ロシアがイランにデモの鎮圧の仕方を指南したという報道もあった。
 逆に、デモがなければ、イランはすぐにでも米国と組めたかもしれない。イランは「ウクライナで使用される武器をロシアに供与していない」(アブドラヒアン外相)と主張している。また、アブドラヒアン外相は「イラン製ドローンがウクライナ戦争で使用されていることが証明されれば、イランは無関心ではいられなくなる」と述べた。一方で、イランとロシアの防衛協力は継続すると語ったそうなので、関ヶ原の時の小早川秀秋と同じく洞ヶ峠を決め込んでいるように見える。
 先のジャンピエール報道官の発言の通り、米国との国交回復のためには、軍事的な変更だけでなく、国内政策まで問題になってくる。イランには、ここが頭の痛いところかもしれない。
 アラブの春の時の失敗があるので、アメリカはイランのデモを見殺しにできないし、するべきではない。だから、アメリカも迂闊に妥協できないが、イランはドルが欲しいはずだ。ドルがないとまともに石油の取引もできない。イランとアメリカの双方の指導者がバカでなければ、取引はまとまりやすいはずだが、宗教が絡んでいるので、先行きはわからない。
 トランプが思いっきりバカだったということだけはわかる。が、トランプ政権の誕生自体にロシアが絡んでいたという噂もあり、また、トランプ政権自体がユダヤ教原理主義的だったという観測もあり、ここでもまた、対ロ政策と宗教が妙に絡まっている。ないと思うけど、陰謀論的に言えば、プーチンがトランプにイランとの核合意を破棄させたともとれる。それくらい、イランとの核合意破棄は、西側全体にとってバカげた選択だった。

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