匿名の小市民として

 映画『ハンナ・アーレント』はハンナの講義を聴き終えた友人が近寄ってきて、彼女を裏切り者と罵倒するシーンで終わったと思うが、そのシーンが印象的すぎてそう記憶しているだけかもしれない。
 ホロコーストの責任者であったナチの要人たちが、「フツーの小役人に過ぎなかった」とするハンナの分析は、ホロコーストが明らかにされたばかりの当時のイスラエルの人たちにとって、到底受け入れがたいものだったかもしれない。
 しかし、ホロコーストのような身の毛のよだつ犯罪を、フツーの小役人がやすやすと行ったからこそおそろしいのではないか。あいつらは生まれつきの悪魔だったんだと片付けてしまうことは、当然の憎しみから発したものであると同時に、また新たな差別の萌芽を含んでいることも間違いない。
 当時、それが受け入れ難かったイスラエルの人たちの気持ちはわかるが、今も、まだ受け入れられないとすると、そこにはまた別の問題があるのではないか。最も残虐な犯罪を犯しうるのは、匿名の思考放棄した小市民たちなのである。まさに『顔のないヒトラーたち』。
 先日、日本の入管施設が、また(これで何度目だろうか?)国連から指摘を受けた。

www3.nhk.or.jp
 
 こんな国他にないんですよ。難民を役人がなぶり殺しにする国なんて。なぜフツーのことができないんですか?。

 ホロコーストの当時のドイツのフツーの人たちが、「私たちは何も知らなかった」というのを責めることはできないと思う。でも、それから80年も経った今、それと同じことを言うのは許されないと思う。入管で行われていることを「知りませんでした」は通らない。
 上の記事を私がやるまで誰もブックマークしないし、その上、わずか37のブックマークしかつかない。しかも、中には、国連の勧告に否定的なコメントも多い。
 呆れますけどね。完全に思考停止している。まさに、今目の前で、匿名の小市民が暴力を振るってる、その現場を見るような思いです。

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