『イニシェリン島の精霊』をめぐるさまざまなレビュー

 いろんな人の『イニシェリン島の精霊』についてのレビューが全然違っていて面白い。
 前に書いたみたく、町山智浩さんはコリン・ファレル演じるパードリックとブレンダン・グリーソンが演じるコルムが潜在的な同性愛だと語っていた。戦時下という時局の変化で、コルムはそういう抑圧的な関係を断ち切ろうとしたのだという解釈だった。
 これに対して岡田斗司夫は、パードリックは少し知的障害があるという。たとえば『レインマン』のダスティン・ホフマンのような存在だという。
 2人ともぶっとんでて面白い。踏み込みすぎてるというか。でも、どちらも無下に否定はできない、そういうレンジの広い映画だと言えるのだろう。
 内戦についての解釈も違う。町山智浩さんのはアイルランド国内での内戦としているのに対し、岡田斗司夫さんはアイルランドイングランドの戦い、GBR内での内戦と捉えていた。これはでも岡田斗司夫さんの方の勘違いだと思う。
 しかし、この映画を戦争の風刺として捉えるには、戦争に具体性がなさすぎると思う。グロテスクなまでに個性的な人間の劇をまのあたりにしながら、特に具体的な言及のない戦争に思いを馳せるのは、「逃げ」というべきだろう。人間のグロテスクさから目を逸らしている。どちらかと言うと戦争の方が比喩なんだろう。
 見巧者の人たちがここまでバラバラなことを言うって、やっぱりこれは名作なんだと思う。


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