入管法改悪成立へ

 参議院入管法改悪の採決が強行されて自民党公明党、維新、国民民主党の賛成で明日9日にも法案が成立する見通しになった。これはもうどこをとっても正しいところのない法案だった。
 まず、そもそも、日本は1981年に「難民の地位に関する条約」に加入しており、その33条【追放及び送還の禁止】「締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」によって、難民を送還してはならないんです。
 ところが、日本では難民の認定率1%未満というあり得ない低さがずっと続いてきた。2016年を例にとると、アメリカ62%、ドイツ41%、イギリス33%、フランス21%に対して日本は0.3%。これは事実上受け入れていないと言っていい。
 つまり、国連で国際的な約束として、各国で難民を受け入れようと決めて、日本もそれに同意しておきながら、実際は拒否するという二枚舌状態を何年も続けているわけなので、これはとっくに世界にバレている。
 2020年には、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が、難民認定申請者2人の長期拘束について「国際人権規約に違反する」とする意見を採択。
 同部会は「拷問禁止委員会や人種差別撤廃委員会等の条約機関から、日本は10年以上にわたり入管収容の長期化や司法審査の欠如などについて繰り返し勧告を受けてきた」「日本では入管収容に関して差別的対応が常態化している」と厳しく批判している。
 およそ先進国、ましてやG7の一員とは思えない振る舞い。やると言いながらやらない、この国際的な背信行為が恥ずかしい。
 一方で、なぜ受け入れないのかがまるでわからない。少子化が問題なんだろ?。つまり、人がいないんだろ?。少子化対策で難民を受け入れろとは言わないが、先進国で少子化が進み、移民がこれを補填するのは世の常であって、自然のサイクルとさえ言える。現に日本も過去にはロシア革命の難民を大量に受け入れてきたんだし、なぜ今だけやらないのかは、理解に苦しむ。
 その一方で外国人技能実習制度などという訳のわからない制度を、勝手に作って、勝手に行き詰まっている。
 つまり、普通に難民を受け入れている普通の国では普通に上がる出生率を入管が堰き止めている。
 くどくどいうまでもなく、要するにこれは差別なんであって、この差別体質がこの国を歪めてきた例はいくらもある。たとえばハンセン病政策はどうだった?。あとで恥かいただろうに。
 今日、また新たな差別政策が実施される現場に私たちは居合わせたわけである。これはしかも国際条約に違反するわけで、今まで以上に国際的な批判にさらされると思われる。歴史的に見れば、国際連盟脱退に次ぐ愚策に見える。
 昔、クルド自治区ドホークについて書いたけれど、難民を受け入れることで、人々の意識が変わり、多様性に対する理解が育まれていく。これに対して、口で何を言おうが、難民を拒絶し続ける限り差別意識が蔓延していく。惨めな未来へ第一歩を踏み出した。というか、もう何十年も惨めな歩みを続けてきたわけだが、それを国家が正式に是認した。
 このフレーズどこかで聞いたなと思ったら、関東軍の暴走を国会が是認した構造とほぼ同じなんだね。昔から、日本にはまともな政治家がいないんだね。