『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』『室井慎次 敗れざる者』

 ホアキン・フェニックスバットマンの悪役ジョーカー誕生を演じた前作『ジョーカー』は、エポックメイキングというか、その年を代表するレベルの作品だったと思う。現に、2019年のキネマ旬報ベストテンでは、外国映画部門の1位を獲得している。
 でも、その続編となるとどうなんだろうという懸念はあった。なぜなら、ジョーカーと言いつつ、あの映画がDCコミックのバットマンに繋がっていくかというと、到底そうは思えないし。バットマンの有名なヴィラン、ジョーカーのキャラクターを拝借したとさえ言えるかどうか、あの映画のタイトルを「ジョーカー」としたのはそれ自体がジョークみたいなものだったとも言える。
 しかも、レディー・ガガが演じるあの女性はジョーカーの相方のハーレクインだろうことはすぐにわかる。で、まあ、数ある映画の中から見るべき映画を探す身としては、今度はハーレクインの誕生秘話をレディー・ガガでやるつもりなのかと早とちりしてしまって観にいくのが遅れてしまった。
 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、前作『ジョーカー』以上にDCコミックではなかった。これだとまだ前作の方がDCコミックの世界観に引っ張られていた。今作で最後のロゴ以外にDCらしいところがあるとすれば舞台になっている街の名がゴッサムであることくらいだ。
 ここまで「バットマンなんて知ったこっちゃねえ」という態度なのは実に清々しい。ホアキン・フェニックスのジョーカーは前作でお披露目が終わっているのだから、ここで余計な説明に時間をさかず彼の物語を終わらせることに集中したのが素晴らしいと思う。
 『室井慎次 敗れざる者』は、11月に公開の『室井慎次 生き続ける者』とあわせて評価しなければならないが、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』に比べて『踊る大捜査線』を引きずりすぎてる。個人的には『踊る大捜査線』に何の思い入れもないが、そんな私でも柳葉敏郎演じる室井さんのキャラクターは知っている。
 せっかくそこまで知れ渡っているキャラクターのスピンオフなのに、前世紀のドラマに引っ張られ続けるのは実に残念だと思う。室井慎次のキャラクターだけを借りてまったく新しい別の推理ドラマを作るのが得策ではなかったか。加藤浩次まで出てくるのはちょっと。『室井慎次 生き続ける者』でどう展開するか、観てみないと何とも言えないが。
 ただ、『踊る大捜査線』はリアルな警察組織に取材したのが新しかったと思う。それを考えると、警視庁と警察庁の人事がごちゃごちゃになってる設定がありうるのかどうか、わたしも別に詳しいわけではなく、重箱の隅をつつくつもりはないけど、ただ、それも結局、邦画興行収入歴代1位だった『踊る大捜査線 THE MOVIE』に引っ張られた結果だと思えるのが残念。
 引退した室井慎次が巻き込まれる秋田での事件にプロットを集中するべきだったのではないかと思う。それがスピンオフってものなんだし。

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