YouTubeのシネマサロンを見といてよかったと思うのはこういうとき。竹内さんが謎解きしてくれている。あんなの一回観ただけでよくここまで理解できるわと驚かされる。これ見てから観に行ったほうがよい。
っていうか、そうか、そりゃ、わたしの頭が追い付かないだけで、この手の推理ものが得意な人は先に情報を入れずに挑戦するのが楽しいのかも。映画がどこかに導いてくれるんだろうと身を委ねてると何もわからなくなる。
舞台は英国の諜報機関。その内部で付き合ってる男女3組6人がディナーに集まっている。
ジョージ(マイケル・ファスベンダー)とキャスリン(ケイト・ブランシェット)は、ともにエージェントで夫婦。
フレディ(トム・バーグ)とクラリサ(マリサ・アベラ)は、エージェントとデータ・アナリストのカップル。
ジミー(レゲ=ジャン・ペイジ)とゾーイ(ナオミ・ハリス)は、エージェントと局内のカウンセラーのカップル。
諜報機関内でこんなに恋愛が成立してるってのが、まず、この映画のユニークなところ。ふつうはスパイ同士の恋愛はご法度じゃないの?。そのあたり脚本も気にしているようで途中でクラリサに言い分けさせている。
この6人をディナーに呼んだのはジョージで、それは、上司のフィリップ(グスタフ・スカルガルド)からこの中に「セヴェルス」という極秘プログラムのデータを盗んだものがいるとの情報を得たからで。料理に自白剤を混ぜて情報を得ようとしている。奥さんのキャスリンにはそのことは知らせてある。
ちなみにフィリップはその夜のうちに殺される。ジョージとフィリップが会っているところを誰かの後ろ姿が見ていたから、あいつが殺したんでしょう。
ディナーがお開きになった後、ジョージはキッチンのごみ箱に不審な映画の半券が捨ててあるのに気づく。ここらへんが難しいんだけど、有能なスパイの夫婦がいて、相手に知られたくない秘密があったとしたら、映画の半券を不用意に捨てたりしないから、ゲストの誰かが何かやろうとしてるなとジョージは気が付いた。
しかも、後日、湖で釣りをしているジョージをジミーが内密に訪ねてきて、キャスリンが昔使っていたコードネームの銀行口座に大金が振り込まれていると知らされる。
で、ジョージはちょっと小細工してキャスリンの秘密の出張先の情報を手に入れる。そして、クラリサに頼んで、監視衛星が切り替わるわずかの隙間を偽装してキャスリンがクリコフというロシアのスパイに会っているのを突き止める。
しかも、会話のデータから彼女はクリコフから何かを買おうとしているのが分かる。彼女がセヴェルスを盗んだのなら売る側にいなきゃいけないはず。
ところがまずいことに、衛星を偽装していたわずかの間に、監視していたロシアの大物テロリストが消えた。監視衛星の情報が漏れていたことになる。しかも、セヴェルスはそのテロリストの手に渡っていた。
「はめられた」ってところ。キャスリンに疑いの目を向けさせれば、ジョージがキャスリンの行動を見張るために監視衛星の切り替えを利用するだろうってところまで読まれていたってことになる。
その夜、夫婦ではめられていたと気づいたジョージとキャスリンは反撃に出ることにする。携帯電話のデータから大物テロリストはCIAのドローンであっさり始末する。
ジョージにこう動くように仕向けたのはジミーだし、キャスリンを出張させたか出張するように仕向けたのは彼女の上司のスティーグリッツ(ピアース・ブロスナン)だから、これで大体の構図はわかったけど、確証をえるためにジョージはもう一度みんなを集める。
これってふつうのスパイの駆け引きに加えて、3組の男女の色恋の駆け引きが絡んでくるのがややこしい。観る方もややこしいけど、書く方もかなりややこしかったかも。こうなるからスパイの恋愛はご法度ってことなんじゃないのかなぁ。
結局、敵の手に渡れば5000人の命が危ぶまれるっていうセヴェルスについては、この登場人物のほとんどが全然気にかけてない。それについていちばん気に病んでるのは、エージェントじゃなくてカウンセラーのゾーイっていう。というのも彼女がカトリックだから。他の誰も政治信条で動いてない。何ならジミーだけは政治信条で裏切っていたって感じ。
イギリスと言えば、スパイ映画の本場なんだけど、世界が様変わりしてるんだなって感じさせるのは、政治信条なんかで人を殺すなよって空気。イデオロギーとかおまえ本気で言ってんのっていう。『半沢直樹』プラスどろどろ不倫劇を、諜報機関を舞台にスタイリッシュに描いたって感じ。
ところで、イギリスといえば、ガザの和平プロセスが何とかなりそうな気配だけど、この裏で動いていたのはトニー・ブレアらしい。ちょっとびっくり。