結婚のアマチュア

結婚のアマチュア (文春文庫)

結婚のアマチュア (文春文庫)

間違えて買った液晶シートはDPー1に流用した。
それで正しい液晶シートを買いに行くつもりだったのだけれど、読みかけの本にとりかかって出そびれてしまった。
アン・タイラーの『結婚のアマチュア』は、年末の週刊文春小林信彦のおすすめだったのだけれど、よく見ると2005年刊行でした。
面白い題名ですね。結婚にアマもプロもなさそうなもの。でも、「婚活」などという言葉も生まれるご時世を先取りしているかも。
パールハーバーから現代に至るまでの一組の夫婦のクロニクル。この間、一組の夫婦が経験するには、世の中はあまりにめまぐるしく変わりすぎたのではないか。特に結婚という制度は、前の世代と次の世代が同じイメージを共有できない。つまり、結婚については親の世代から何も学べないという意味で、今という時代は、誰もが結婚のアマチュアではある。
まして、結婚はキリスト教の七つの秘蹟などといったら、誰でも噴出すことだろう。
恋愛、結婚、セックス、の三つがパッケージでしか売っていなかった時代は誰でもそれで満足していた。今はこれらがばら売りされて当然だと誰もが思っているはずなのに、なぜか結婚だけは古い時代のものを求める人がいる。それは無理というものだ。そうでしょ?
ひとつの家族をめぐる年代記小説として読み応えがあった。多分こういうのを、かつて「本格小説」と呼んだのだろう。
妻ポーリーンは読むには魅力的だが、現実にはもっとも苦手なタイプ。こういう主人公がいないとクロニクルは持たないのかなぁ。『楡家の人々』の「龍さま」もなかなかだったが。
私は長女のリンディに自分を投影してしまった。両親が子供じみていると子供時代を過ごせない。子どもが「自己責任」で大人になるには犠牲がともなう。うまくいくときもあり、うまくいかないときもある。なにしろ両親が結婚のアマチュアである以上に、子どもはおとなのアマチュアだからね。