『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』ネタバレ

ジム・ブロードベントは2017年の『ベロニカとの記憶』が印象深い。その時書いたブログを読み返したら「『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を気に入った人にはオススメ」とまた書いていた。 ああいう地味ながら華やかな結果を残した映画の代表がわたしの中で…

『ルックバック』ネタバレ

今更書くこともないくらい大ヒットしてるらしい。 平日、レイトショーで観に行ったので「特別料金」って、尺が58分と短いので安いのかなと思ったら、逆に1700円と。ふつうの料金より安いけどレイトショーとしては高い。 ふだんアニメを観ないものとしては、…

『ジョン・レノン 失われた週末』

ビートルズ関連の映画は最近毎年のように公開されている。ややインフレ気味。 『ジョン・レノン 失われた週末』は、ファンの間ではそのまま「失われた週末」として知られている、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが別居していた一時期、1973年から75年のだいた…

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』オススメ

「東海岸系」という言葉があるかどうか知らないが、あるとすればそういう。例えば、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』とか『グッド・ウィル・ハンティング』とか『ボストン・ストロング』とか。単にボストンつながりなだけな気もするが、ともかくも『マン…

『ミッシング』

吉田恵輔監督作品ではわたしは何と言っても『ヒメアノ〜ル』。ムロツヨシ、佐津川愛美、濱田岳、の特にムロツヨシが絶品だった。 だけど、『愛しのアイリーン』、『空白』は、世評の高さに懐疑的。 『愛しのアイリーン』の木野花、安田顕のリミッターがぶっ…

『○月○日 区長になる女』

『○月○日 区長になる女』は、聞くところによると、今年のお正月にポレポレ東中野で封切られて、そのままじわじわヒットして、だんだん地方に広がってきているらしい。 政治を扱ったドキュメンタリー映画としては久しぶりに痛快で、泣きこそしないけれど、素…

『碁盤斬り』ネタバレ

白石和彌監督の『碁盤斬り』の原典である落語「柳田格之進」は、キャストの1人でもある立川談慶によると、彼の師匠の立川談志は「今の時代には合わない」と嫌って、生涯やらなかった噺だそうだ。 YouTubeにいくつも上がってる中で古今亭志ん朝のものを聴いて…

幻想のフラヌール―版画家たちの夢・現・幻

小津安二郎の『宗方姉妹』を見た後、まだあまりにも早いので、町田市立国際版画美術館に「幻想のフラヌール―版画家たちの夢・現・幻」を観に行った。 全品所蔵品。町田市立国際版画美術館なら所蔵品だけで回せるかもしれない。 《荒波》門坂流《命の繋がり》…

『関心領域』ネタバレ

毎週のように映画画を見てると「ホロコースト大喜利」とも言うべき一大ジャンルは避けて通れないし、それに名作も多いのだけれど、今年は特に、虐殺された人たちの子孫が今は虐殺する側にまわっていると思うと徒労感が募る。 ジョナサン・グレイザー監督は、…

『マリウポリの20日間』ネタバレ

運び込まれた赤ん坊の処置をしていた医師がAEDを取り出した時は思わず下を向いてしまった。心臓、止まってんのかい。とすると、この子を抱いて飛び込んできた母親の腕の中で、もうこの子は死んでたはずだし、少なくとも母親の腕はそれをもう感じてたはずだ。…

『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』

エルガルド・モルターラはユダヤ人の一家に生まれたが、まだ幼児のころに、イタリア語もしゃべれないお手伝いさんが「善意」でキリスト教の洗礼を授けてしまった。熱を出して苦しんでたのを見て、このままでは地獄に堕ちてしまうと可哀想に思ったそうだ。 18…

『湖の女たち』ネタバレ

組織や社会が腐っていく、そのリアルな匂いが漂ってくる濃密な映画。『さよなら渓谷』の吉田修一と大森立嗣監督がふたたび。 たぶん今年の映画を振り返ろうとするときには必ず蘇ってくる一作だと思う。 吉田修一は『さよなら渓谷』の時は映画のシナリオまで…

『あまろっく』、『悪は存在しない』ネタバレ

GWには『あまろっく』と『悪は存在しない』を観た。 おそらくこの片方をいい映画だと思う人は片方はいい映画だと思わないかも。映画としての成り立ちがまるで違う、というか、映画の概念すら全く違うようにさえ思える。 ただ、どちらも監督の作家性が色濃く…

大阪市立東洋陶磁美術館

いわゆる安宅コレクションを集めた東洋陶磁美術館がリニューアルオープン。 これもまあ実は去年のGWに六本木一丁目の泉屋博古館に来ていた。美術館が改装工事中にあちらに貸出したのだろう。 ただ、あたりまえだけど、耐震設計のされた専用ケースで、ヒモが…

日彫展(2024)

デ・キリコ展のついでに行った日彫展。 《窓》野原昌代https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/knockeye/20240504/20240504071035_original.jpg 池川直《MUSAη'(ポリュムニア讃歌)》https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/knockeye…

雪舟伝説 京都国立博物館

《秋冬山水図》、《破墨山水図》、《山水図》、《四季山水区卷(山水長卷)》、《天橋立図》、《慧可断臂図》と雪舟の6つの国宝が一堂に会す展覧会が、京都国立博物館のみで開催されて、そのあとどこにも巡回しない。その上、それをGWの最中に観に行くって…

兵庫県立美術館 常設展

兵庫県立美術館といえば、今は横尾忠則現代美術館になっている場所にあった頃は、隣りの市民ギャラリーが小磯良平記念館になっていた。 小磯良平《T嬢の像》1926https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/knockeye/20240502/20240502193524_origina…

スーラージュと森田子龍、白髪一雄

兵庫県立美術館の展示の充実ぶりに驚いた。贅沢と言うべきか。 兵庫県立美術館 スーラージュと森田子龍を観に行ったのだけれど、同時にキース・ヘリング展も開催中。これは森美術館からこちらに巡回してきたものだ。加えて、常設展では白髪一雄の生誕100年記…

アーティゾン美術館 常設展

ブランクーシ展を見た後、上野のデ・キリコ展にまわるつもりだったんだけど、常設展で思いのほか長居してしまい、また後日ってことになった。 ここの常設展は、青木繁の《海の幸》、クロード・モネの《黄昏、ヴェネツィア》、ルノワールの《すわる水浴の女》…

ブランクーシ展

アーティゾン美術館でコンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)の展覧会。意外にも本邦初だそうだ。 ブランクーシ 本質を象る これが 《苦しみ》1907こうなって 《眠る幼児》1907こうなった。 《眠れるミューズ》(1910-11)《眠れるミューズ 2》1923(2…

無量義経の問題

井沢元彦のYouTubeにこれが出てきて唖然とした。 この動画の前段の部分は知っていた。信長のその時代にとっくに決着がついたと思っていたのに、近代になってもまだこれを持ち出す学者がいたってことに驚いた。 動画の内容を知ってもらってる前提で話すが、一…

『熱のあとに』ネタバレ

『ゴーン・ガール』と同じく、旦那を主人公にしたら超コメディなのに、嫁さんの目線から大真面目に描いてるので、笑っていいのかどうか戸惑う。笑うべきだったのかなぁ。ちなみに『ゴーン・ガール』は北野武が絶賛してた。 主人公の旦那さん役は仲野太賀なの…

『フォロウイング』

『オッペンハイマー』を受けて、クリストファー・ノーランのデビュー作が公開中。制作費は何と6,000ドルだそうだ。当時のレートで日本円にして60万〜70万くらい。 要するに友達と手弁当で撮った、クリストファー・ノーランの手見せだな。 お金がかけられな…

『異人たち』ネタバレ

『異人たちとの夏』、山田太一原作、大林宣彦監督。出演、片岡鶴太郎、秋吉久美子、風間杜夫、名取裕子、永島敏行。なんでこんなに憶えているかというと、この度の『異人たち』の公開に合わせてYouTubeで無料公開していたのを観たばかりなのだ。 いい映画だ…

『春原さんのうた』

なんか日本にUberがすんなりいかなそうなのは、ひとつはタクシー会社の既得権益の問題で、これが一番大きいのだろうとは思うものの、日本の特殊事情として、公共交通機関が発展し過ぎているってのがあるかも。 杉田協士監督の『春原さんのうた』が下高井戸シ…

『ソウルフルワールド』

コロナ禍で公開できなかったディズニーのアニメが立て続けに公開されている。 ディズニーとしては配信の方が儲かることに気づいてしまい、おかげでビートルズのゲットバックセッションもディズニー+のみでの公開となってしまった。 『ソウルフルワールド』は…

箱根の桜、彫刻の森、芦ノ湖畔

私がかってに勘違いしたのか、去年も訪ねた芦ノ湖の湖畔の一本桜が「咲いた」という情報を目にしたと思って箱根に出かけてしまった。 今年は寒さで全体に開花が遅れてるのに、去年(4/16)と同じはおかしくないかと内心で訝りつつも、去年は散り初めてたし…

『パスト ライブス/再会』ネタバレ

「移住」って日本人にはあまり馴染みがない。主人公ノラの、韓国からカナダへ家族で移住して、長じてさらに単身アメリカへ、という経歴は、セリーヌ・ソン監督自身の経歴でもあるそうだ。 そう聞くとこの映画の冒頭はそういう経歴の人に独特の視点なのかもし…

印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵

全然関係ないけど、ウスター美術館の「ウスター」はウスターソースの「ウスター」と同じ綴りだったが、こんな綴り“ Worcester”とは知らなかった。せいぜい“uu”とか、“wo”とかなのかなと思うじゃないですか。“worce”って。 今週末で会期末。東京都美術館なの…

『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』

『ソウルメイト』『ソウルメイト/七月と安生』『テルマ&ルイーズ 4K』となぜか女性たちの友情を描く映画を立て続けに観ることとなったが、この『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』もそのひとつ。しかもこれは実話に基づいている。 監督・脚本は『…