『ルックバック』ネタバレ

 今更書くこともないくらい大ヒットしてるらしい。
 平日、レイトショーで観に行ったので「特別料金」って、尺が58分と短いので安いのかなと思ったら、逆に1700円と。ふつうの料金より安いけどレイトショーとしては高い。
 ふだんアニメを観ないものとしては、んじゃ辞めよかな、とも思ったが、58分のアニメが1700円って、いい映画の匂いがぷんぷんすると思い直して観に行った。
 絶妙な値段ってあるんだろうな。これが1900円だったらフツーじゃん。1700円ってのがミソだな。
 原作のマンガ自体がかなり前から話題になっていた。しかしながら原作がいいからと言ってアニメがよくなるとは限らないし、繰り返しになるが、個人的にはふだんアニメを観ないので。
 例えば、『この世界の片隅に』をわたしは観ていない。これだけで憤激される方がいてもしかたないが、『この世界の片隅に』はアニメとして初めてキネマ旬報の年間映画1位を獲得した映画で、悪く言う人いない、どころか誰に聞いても評価が高いし、実際、わたし自身も何度も映画館の前まで足を運んだが、あの有名なキービジュアルがどうしても気に入らなくて結局観なかった。
 すずさんの、あの花を前掛けに貯めて振り返ってる蹲居の姿勢がごく微妙におかしい。どこがおかしいかわからないくらい微妙におかしいので、逆に気持ち悪い。フツーに撮った写真がなんかおかしいみたいな感じ。
 それから、書きながらも良くないなとは思うが、すずさんのあの感じが(と言ってもポスターのあの絵だけしか知らないが)虫唾が走るくらい嫌い。というより、あの絵を平気でキービジュアルにできる感覚が理解できない。ので、観てもわたしには入ってこないだろうとしか思えなかった。映画評論家か何かなら失格だろうけど一観客に過ぎないし観たくないものは観たくない。
 ちなみに『ホールドオーバーズ』で号泣するのは変わってるらしい。本年度ベストという人も多いが、号泣とかじゃないらしい。
 『ルックバック』は、しかし、日本のアニメーターがリミッター外して描いたらこんなもんじゃないっすよって言われてる気がした。 
 絵がうまっ。例えば主人公が喪服で立ち上がる後ろ姿の、腰のあたりだけしか写っていない場面。ただの黒ベタなのに、フォルムが完璧。
 そして、そのシーンの展開の見事さ。これは原作マンガのすごさなんだろうけれど、「ルックバック」というタイトルが、笑いと悲しみの二重の像となってそこに結ばれている。
 突然の悲劇に打ちひしがれ、一瞬、過去を全否定しそうになる主人公が、またその過去に背中を押されて、前向きに歩き始める。
 つまり観客は実はこの時の主人公が見ていた過去を映画の最初から追体験していたわけ。この時の主人公の一瞬の走馬灯を私たちは見ていたわけである。
 見終わって58分というのが信じられない思いがした。山下達郎がサンデーソングブックで珍しく「イエスタデイ」をかけて「わずか2分なのにこの濃密さ」と言ったのを思い出した。
 



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