映画

『子供はわかってあげない』

上白石萌歌の存在感が圧倒的だと思う。 というのは、主人公の朔田さんは高2の女子で水泳部なんだから、撮り方によってはグラビアみたいになりかねない。逆に、それを避けようとすると、原作がマンガなわけだから、アニメチックになりかねない。 そのどちらに…

『ドライブ・マイ・カー』観ました

ドライブ・マイ・カー カンヌ映画祭で脚本賞を獲得した『ドライブ・マイ・カー』の同名の原作は、『女のいない男たち』という、村上春樹の短編集の巻頭をかざる小説だ。 初出は、文藝春秋2013年12月号で、当時、文藝春秋を買ったり買わなかったりしていた私…

『プロミシング・ヤング・ウーマン』補遺

佐久間宣行さんが遅ればせながら『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観たそう。絶賛していた。 今更なのは、独立して忙しいのかな、とか、年頃の娘さんがいるから、テーマがきついのかなとか、余計なことを考えた。 それで、また『プロミシング・ヤング・…

『太陽の子』ネタバレ(マジで読まない方がよい)あり

太陽の子 これは観ようと思ってたが遅くなった。最寄りの映画館では、明日で上映終了とあったので、仕事終わりに駆け込んだ。 太平洋戦争末期、日本軍のために核兵器開発に取り組んでいた、京大の研究者たちを主人公にしている。 柳楽優弥、三浦春馬、有村架…

『アメリカン・ユートピア』と『ストップ・メイキング・センス』観ました

『ストップ・メイキング・センス』と『アメリカン・ユートピア』 あつぎのえいがかんkikiは音の良さで売ってる。TOHOシネマズ海老名で観るよりは断然よいと思う。TOHOシネマズ海老名は、経年劣化からかスクリーンのシミが気になる時がある。 ただ、今回はち…

『日本のいちばん長い日』

Amazon primeで『日本のいちばん長い日』原田眞人版を観た。 公開当時は三船敏郎が阿南惟幾を演じた1967年版と比較してあれこれ言われた記憶があるが、1967年版の決定的な欠点は、戦後22年を経たこの年でさえまだ昭和天皇を神格化していることだ。昭和天皇を…

『夕霧花園』かなりネタバレ

去年の夏はいったんコロナが収まりかけていたと記憶している。それが冬になってまた感染者数が増え始めたのだった。今年は、この猛暑にもかかわらず、この感染者数の増加は、いったいこの冬はどうなることだろうかと、今から危ぶまれる。 そんなわけで、あま…

『アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン 』

至上の愛 ~チャーチ・コンサート~ <完全版>アーティスト:アレサ・フランクリンワーナーミュージック・ジャパンAmazon アレサ・フランクリン生前の最大のヒットアルバムだった『至上の愛 チャーチ・コンサート』は、教会で聴衆を前にゴスペルを歌ったライブ録…

『やすらぎの森』

『ノマドランド』が、ドキュメンタリーを原作として、その取材対象をキャストに起用しさえしながらも、まるでファンタジーのような味わいを醸し出していたのも、社会から締め出された老人の視点が、一般に信じられている社会常識を相対化してしまうからだろ…

『モンテッソーリ 子どもの家』を観た

若いとは言えない年齢で引きこもりに陥った。なんとか2~3年でそこから抜けだせたものの、そこからは自分の人生を生きているという気がしない。 自己肯定感の薄い人生を生きてきた。引きこもりから抜け出せたといっても、人生を取り戻したわけではない。人生…

『漁港の肉子ちゃん』と『オッドタクシー』

変わり者の運転手Amazon 伊集院光さんが急にアニメ映画付いて『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』、『100日間生きたワニ』、『竜とそばかすの姫』、『漁港の肉子ちゃん』と立て続けに観たら、なんと、一番良かったのは『漁港の肉子ちゃん』だったそうだ。 …

『クレールの膝』観ました

クレールの膝 エリック・ロメール監督作品がデジタルリマスターされて特集上映されている。全国津々浦々を巡回するそうで、近くの映画館で『クレールの膝』を観た。 1970年の映画で、まだフランスがキラキラしている。といっても、舞台はパリではなく、アヌ…

『プロミシング・ヤング・ウーマン』観ました

プロミシング・ヤング・ウーマン 『プロミシング・ヤング・ウーマン』は前評判どおりすばらしかったのでおススメです。 その前に、この前の記事のあと、千原ジュニアさんがご自身のyoutubeチャンネルで『茜色に焼かれる』を紹介していたのを見つけま…

『茜色に焼かれる』についての

『茜色に焼かれる』について武田砂鉄と石井裕也監督が話しているのを見つけたので紹介したい。 前作の『生きちゃった』からずっと底に流れ続けているテーマは「言葉」、とくに日本語だと思っている。ので、監督自身がそこに言及しているこのラジオは興味深か…

『アフリカン・カンフー・ナチス』

いつものように「霜降り明星のオールナイト日本」をradikoで聞いていたら、途中で配信が途絶えた。何かやらかしたんだなとは思ったけど、どんな発言をしたかも分からないので、何の判断もできない。メディア自身が平気で検閲を行う。 何か熱海の土石流につい…

『Arc アーク』観ました

Arc アーク 『Arc アーク』は、不老不死が技術的に実現された近未来を扱っている。この作品内ではDNAのテロメアの増殖を高度に制御することでその技術が可能になったと説明されている。ショーン・コネリーの『未来惑星ザルドス』の昔に比べると、科学的な説…

『牛久』見逃した

入管問題を扱ったドキュメンタリー映画『牛久』ってのがあったそうだ。気がついたら配信が終わっていて残念。ぜひまた公開してほしい。 ちなみに毎日新聞の記事に関するはてぶコメントにはがっかりさせられる。日本人の島国根性は、しかし、イギリスだって島…

『マ・レイニーのブラックボトム』『グンダーマン』『デニス・ホー』

なぜかミュージシャンの映画を立て続けに3本観た。 『マ・レイニーのブラックボトム』は、これでチャドウィック・ボーズマンがアカデミー賞をとると言われていたが、結果的には『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスになった。 予備知識なしでも元ネタが舞…

『アンモナイトの目覚め』観ました(ネタバレあり)

アンモナイトの目覚め ケイト・ウィンスレットの演じるメアリー・アニングという女性は実在した19世紀の古生物学者だそうだが、この映画のメアリー・アニングのキャラクターはまったくの創作で、ケイト・ウィンスレットの抑制された演技が、陰影の深い性格…

『大冒険』『人も歩けば』『三等重役』『名探偵アジャパー氏』

あのあと読んだ記事によると石井裕也監督は『茜色に焼かれる』をたった1ヶ月ちょっとで撮り切ったそうだ。スティーブン・スピルバーグ史上最速と言われている『ペンタゴン・ペーパーズ』でも半年かかってる。しかも、あれは脚本が先にあったのに対して、石井…

『茜色に焼かれる』観ました

茜色に焼かれる この2週間の週末は、小林信彦が選んだマニアックな喜劇映画を観るために、シネマヴェーラ渋谷に通っている。 個人的には1日3本が映画を観る限界だと思ってる。できれば2本にとどめたい。で、1日のプログラムから2本を選ぶと、1本目と2本目の…

『喜劇とんかつ一代』小林信彦 これがニッポンの喜劇人だ

喜劇 とんかつ一代 シネマヴェーラ渋谷で始まってる「小林信彦 これがニッポンの喜劇人だ」の中から『喜劇 とんかつ一代』と『東海道弥次喜多珍道中』、『雲の上団五郎一座』を見た。 なかでも『喜劇 とんかつ一代』は『幕末太陽傳』の川島雄三監督作品で、…

黒澤明インタビュー

NHKラジオアーカイブズで、たまたま黒澤明のインタビューが聴けた。『影武者』でパルムドールを受賞した年の暮れのインタビュー。 「黒澤さんにとってですね、面白い映画ってのはどういうものだって風に考えになりますか?」 「そうねえ、その、まずよくわか…

『JUNK HEAD』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』

『JUNK HEAD』の監督(というかほぼ全部)をした堀貴秀が「激レアさんを連れてきた」に出てた。 私としては、『JUNK HEAD』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を比べてみたい気持ちになる。圧倒的なオリジナリティの天才という意味では似てると思う。で…

『ファーザー』

『ファーザー』についてこぼれ話から始めると、今年のアカデミー賞は例年とちがい、式典の最後を作品賞でなく主演男優賞の発表で締めくくった。 なぜこんな異例の演出がなされたかというと、先ごろガンで早逝したチャドウィック・ボーズマンが『マ・レイニー…

『シカゴ7裁判』観ました

入管法の改悪がとりあえず回避されてまずはよかったけれど、今回の取り下げは選挙目当ての批判回避行動にすぎないので、今後もどさくさに紛れて法案提出されるおそれは残るし、そもそも10年も前から日本の入管は国際的な批判に晒されてきたので、今回の法案…

『SNS 少女たちの10日間』

『ファーザー』と『シカゴ7裁判』の合間にうまい具合に上映スケジュールがはまったので観てみました。 宇多丸さんがアフター6ジャンクションで紹介してた時には、上映後にトイレで吐いてる女性がいたとかだったので、見るかどうか迷ったんですけど。 チェ…

『街の上で』

今泉力哉監督は大阪NSCの26期生、かまいたち、和牛が同期だそうだ。今年はニューヨークがブレイクして東京NSCが注目を集めている。吉本興業が始めたこのタレント養成学校は、その一期生のダウンタウンを頂点に、今の芸能界に及ぼした影響はすごく大きい。 世…

『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』盛大にネタバレ

地下鉄サリン事件を知らない人のため書いておくと、1995年3月20日、オウム真理教というカルト団体によって、東京の地下鉄車内に毒ガスのサリンが撒かれ、多くの死傷者を出した。あのとき死者が奇跡的に少なかったのは、松本サリン事件を経験したていた医師が…

『ミナリ』

『ミナリ』と『春江水暖』は対照的に感じた。 『春江水暖』は、ちょっと四季耕作図とか四季花鳥図みたいに、一枚の屏風に四季を全部描き込んだような、東洋的な時間感覚さえ感じさせる。 『ミナリ』は韓国の家族を描いているんだけど、韓国映画ですらない。…