映画

『碁盤斬り』ネタバレ

白石和彌監督の『碁盤斬り』の原典である落語「柳田格之進」は、キャストの1人でもある立川談慶によると、彼の師匠の立川談志は「今の時代には合わない」と嫌って、生涯やらなかった噺だそうだ。 YouTubeにいくつも上がってる中で古今亭志ん朝のものを聴いて…

『関心領域』ネタバレ

毎週のように映画画を見てると「ホロコースト大喜利」とも言うべき一大ジャンルは避けて通れないし、それに名作も多いのだけれど、今年は特に、虐殺された人たちの子孫が今は虐殺する側にまわっていると思うと徒労感が募る。 ジョナサン・グレイザー監督は、…

『マリウポリの20日間』ネタバレ

運び込まれた赤ん坊の処置をしていた医師がAEDを取り出した時は思わず下を向いてしまった。心臓、止まってんのかい。とすると、この子を抱いて飛び込んできた母親の腕の中で、もうこの子は死んでたはずだし、少なくとも母親の腕はそれをもう感じてたはずだ。…

『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』

エルガルド・モルターラはユダヤ人の一家に生まれたが、まだ幼児のころに、イタリア語もしゃべれないお手伝いさんが「善意」でキリスト教の洗礼を授けてしまった。熱を出して苦しんでたのを見て、このままでは地獄に堕ちてしまうと可哀想に思ったそうだ。 18…

『湖の女たち』ネタバレ

組織や社会が腐っていく、そのリアルな匂いが漂ってくる濃密な映画。『さよなら渓谷』の吉田修一と大森立嗣監督がふたたび。 たぶん今年の映画を振り返ろうとするときには必ず蘇ってくる一作だと思う。 吉田修一は『さよなら渓谷』の時は映画のシナリオまで…

『あまろっく』、『悪は存在しない』ネタバレ

GWには『あまろっく』と『悪は存在しない』を観た。 おそらくこの片方をいい映画だと思う人は片方はいい映画だと思わないかも。映画としての成り立ちがまるで違う、というか、映画の概念すら全く違うようにさえ思える。 ただ、どちらも監督の作家性が色濃く…

『熱のあとに』ネタバレ

『ゴーン・ガール』と同じく、旦那を主人公にしたら超コメディなのに、嫁さんの目線から大真面目に描いてるので、笑っていいのかどうか戸惑う。笑うべきだったのかなぁ。ちなみに『ゴーン・ガール』は北野武が絶賛してた。 主人公の旦那さん役は仲野太賀なの…

『フォロウイング』

『オッペンハイマー』を受けて、クリストファー・ノーランのデビュー作が公開中。制作費は何と6,000ドルだそうだ。当時のレートで日本円にして60万〜70万くらい。 要するに友達と手弁当で撮った、クリストファー・ノーランの手見せだな。 お金がかけられな…

『異人たち』ネタバレ

『異人たちとの夏』、山田太一原作、大林宣彦監督。出演、片岡鶴太郎、秋吉久美子、風間杜夫、名取裕子、永島敏行。なんでこんなに憶えているかというと、この度の『異人たち』の公開に合わせてYouTubeで無料公開していたのを観たばかりなのだ。 いい映画だ…

『春原さんのうた』

なんか日本にUberがすんなりいかなそうなのは、ひとつはタクシー会社の既得権益の問題で、これが一番大きいのだろうとは思うものの、日本の特殊事情として、公共交通機関が発展し過ぎているってのがあるかも。 杉田協士監督の『春原さんのうた』が下高井戸シ…

『ソウルフルワールド』

コロナ禍で公開できなかったディズニーのアニメが立て続けに公開されている。 ディズニーとしては配信の方が儲かることに気づいてしまい、おかげでビートルズのゲットバックセッションもディズニー+のみでの公開となってしまった。 『ソウルフルワールド』は…

『パスト ライブス/再会』ネタバレ

「移住」って日本人にはあまり馴染みがない。主人公ノラの、韓国からカナダへ家族で移住して、長じてさらに単身アメリカへ、という経歴は、セリーヌ・ソン監督自身の経歴でもあるそうだ。 そう聞くとこの映画の冒頭はそういう経歴の人に独特の視点なのかもし…

『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』

『ソウルメイト』『ソウルメイト/七月と安生』『テルマ&ルイーズ 4K』となぜか女性たちの友情を描く映画を立て続けに観ることとなったが、この『コール・ジェーン -女性たちの秘密の電話-』もそのひとつ。しかもこれは実話に基づいている。 監督・脚本は『…

『ソウルメイト』と『ソウルメイト 七月と安生』ふたつともネタバレ

良心的って言葉を映画評に用いる場合それはどういう意味なんだろう。 名作でかつ良心的な映画はありうる気がする。一方で、あまり出来の良くない映画を良心的とは言わない気がする。出来の悪い映画が良心的だろうがどうだろうが知ったことじゃない。良心的と…

『オッペンハイマー』

町田まで行って一応IMAXで観た。 クリストファー・ノーランってわかりやすいって思った。 私つねづね思ってきたけど、日本が唯一の被爆国とか言って被害者ぶってるの何か気持ち悪いんですよね。同じ日本人として恥ずかしい。 日本もドイツも原爆を開発しよう…

『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション 前章』『マダム・ウェブ』

私、基本的にアニメ見ないんだけど、日本のアニメのレベルは高いわ、結局。 『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション 前章』のことだけど、絵、シナリオ、キャスト、オリジナリティ、文句のつけようがない。すばらしいとしか言いようがない。 こうい…

『アーガイル』ネタバレ

マシュー・ボーンの『アーガイル』の予告編がすごく面白くて、ブライス・ダラス・ハワードが演じる作家エリー、彼女の書くスパイ小説が予言のように現実の事件が起こる。それで、現実のスパイ組織に追われることになる。 この謎解きがなかなかよくできていて…

『ボーはおそれている』

2月16日に公開された『ボーはおそれている』を今さら観た。3時間となるとよほど観たい映画でないとぐずぐずしてしまう。 アリ・アスター監督の『ミッドサマー』は観たけど、世評の高さほどには好きじゃなかった。あのカルトな感じが私にはステレオタイプに見…

『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』

いい映画が泣けるとは限らない。最近、いいけど泣けないのが続いたけど、これは『コット、はじまりの夏』以来。だいぶ質は違う涙だけれども。 リトル・リチャードをはじめ、ビートルズ以前のミュージシャンは全員ひとつのフォルダーに入ってる。意識してとい…

『Here』『ゴースト・トロピック』

ベルギーの映画監督のバス・ドゥヴォスという人の作品『ゴースト・トロピック』(2019)と『Here』(2023)を続けて観た。 「ほぼ日」によると、ベルリン映画祭で一目惚れした人が買い付けてきたらしい。 出演者やオシャレなクレジットが共通していて、独特…

『春の画 SHUNGA』

大英博物館で好評を博した「春画展」が、本国日本では3年も宙に浮いたまま凱旋開催されず、結局、大英博物館の展覧会とは違うかたちで、改めて永青文庫で開かれることになった経緯を描いた映画『春画と日本人』も面白かったし、勉強になったが、今回の映画は…

『落下の解剖学』ネタバレ。

雪の山荘でひとりの男性が転落死する。その殺害を疑われた妻をめぐる法廷劇。というと、例えば、三谷幸喜の『12人の優しい日本人』も、ホロコーストの有無をめぐって争われた『否定と肯定』も、コミカルであれシリアスであれ、真実をめぐって争う両陣営のや…

『夜明けのすべて』

三宅唱監督新作。 この人の過去作品では佐藤泰志の小説を映画化した『きみの鳥はうたえる』を観た。これは原作も読んだので比較できるが、ラストが原作とまったく違う。このラストを撮りたいがためにこの原作を選んだんじゃないかと思うくらい。原作をよく読…

『一月の声に歓びを刻め』ネタバレ

三島有紀子監督作品では『幼な子われらに生まれ』が印象に残っている。浅野忠信、田中麗奈、宮藤官九郎、は記憶に残っていたが、あの時の田中麗奈の連れ子を演じていた子は南沙良だったようだ。 重松清の小説が原作、そして、脚本は荒井晴彦だった。この布陣…

『コット、はじまりの夏』

今年観た映画の中では今のところこれが最良。 個人的には小さい女の子が主役の映画はどうも合わないのだけれど(例えば『秘密の森の、その向こう』とか、セリーヌ・シアマ監督では名作だった前作『燃ゆる女の肖像』と同じくらい評価が高いのが、わたしはよく…

『ファースト・カウ』『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

この2つの映画はつまり「ファースト・カウ」と「レイテスト・カウ」。 アメリカ人(にかぎらず、だろうが)は、ずっと貧しさから抜け出そうともがいてきたって話なんだけど、「ファースト・カウ」のWEBには「おいしい話にご用心」とキャッチコピーがあって…

『哀れなるものたち』ネタバレ

「クリトリス」がフェミニズムの用語であることをたぶん日本人はなかなか理解しにくい。映画がクリトリスについて語っている場合、フェミニズムについて語っていると考えてよい(『あなたを抱きしめる日まで』のジュディ・デンチでも)。 クリトリスの切除は…

『ヤジと民主主義 劇場拡大版』

マスメディアを信用しなくなってしまっているので、たまにこういうのにぶつかると愕然とする。 今、素人がスマホで動画を撮れるって時代になってホントによかったと思う。文字メディアで聞いただけなら到底信じられなかった。 選挙演説に来てる、その候補者…

『レザボア・ドッグス』

『レザボア・ドッグス』を映画館で観た。当時、画期的でセンセーショナルだったのがよく分かる。 去年、『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』を観たが、タランティーノの撮影現場は実に楽しそうだった。 シーンを撮り直す際に 「OK、だけども…

『サン・セバスチャンへようこそ』

『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』がクランクアップしたのは2017年だった。日本では2020年に公開されたが、本国アメリカではいまだに公開されていない。 それは、ローナン・ファローの言いがかり、それも、#metooに絡めた言いがかりだったので、さもウ…