映画

『スノードロップ』ネタバレ

新宿武蔵野館で10/10〜10/23の2週間限定公開の予定だった映画が、ようやく大阪でも公開を迎えたその初日だったそうで、吉田浩太監督と主演の西原亜希さんが舞台挨拶にいらしていた。 映画のクランクアップは2023年だそうで、それから劇場公開までおおよそ3年…

『ホーリー・カウ』

『見はらし世代』につづいて二十代の監督の作品。国籍と性別はちがう。ルイーズ・クルヴォワジエ監督は1994年生まれのフランス人女性。だと思う。生まれはスイスのジュネーヴだそうで、この映画の舞台になっている、スイスに国境を接したフランスのジュラ県…

『秒速5センチメートル』ネタバレ

奥山由之って人は兄弟ふたりの中でも、お父さんのプロデュース感覚を強く受けついでいるのかもしれない。 『アット・ザ・ベンチ』も、わたくし勘違いしていたけど、脚本家は各パートごとに違うものの、演出は奥山由之ひとりだったのね。蓮見翔のパートがまる…

『ブラックバッグ』ネタバレ

YouTubeのシネマサロンを見といてよかったと思うのはこういうとき。竹内さんが謎解きしてくれている。あんなの一回観ただけでよくここまで理解できるわと驚かされる。これ見てから観に行ったほうがよい。 っていうか、そうか、そりゃ、わたしの頭が追い付か…

『ワン・バトル・アフター・アナザー』ネタバレ

ポール・トーマス・アンダーソン監督はアメリカをよく知っているってことなんだろう。右や左の論客、デマゴーグ、スタンダップコメディアンなどなどをひっくるめて黙らせる作品力。 最低な下ネタから喫緊の政治テーマまで、ひとつの串で貫き通して、「アメリ…

『宝島』

『宝島』は暴動のとこまですごく良かったけどな。 上昇気流に乗って上げて上げて上げていく感じは、公式サイトのコピーどおり「劇場でたぎる」感じだったんだけど、その後、墜落したな。 昇っていくのが上手いだけでももちろん大したものなんだけど、頂から…

『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~』

タマラ・コテフスカ監督では『ハニーランド 永遠の谷』というドキュメンタリーを観た。米アカデミー賞の国際映画賞とドキュメンタリー賞の二部門同時にエントリーされたのは史上初だったそうだ。 マケドニアで昔ながらのやり方で蜂蜜を採集して生活している…

『遠い山なみの光』ネタバレ 再考 "a pale view of hills" on the second thought

映画『遠い山なみの光』については、原作者のカズオ・イシグロがエグゼクティブ・プロデューサーってこともあり、終盤のねたばらしにはちょっとショックを受けた。ということは、鑑賞直後のネタバレに書いた。ので、詳細についてはその記事にあたってほしい。…

『ピアノフォルテ』ネタバレ

映画『遠い山なみの光』公開を記念して、石川慶監督の『蜜蜂と遠雷』をくそみそにこき下ろしてきたこのブログなんだが、この『ピアノフォルテ』はまさに、わが意を得たり。 ピアノコンクールのコンテスタントたちの緊迫感ってこれですよ。これをやんなきゃな…

『キス・ザ・フューチャー』ネタバレ

ミロシェビッチの軍が、サラエボの町を包囲した映像に、「アメリカの大統領がNYの町を攻撃するような」とコメントが乗せられる。 これは「ありえない例え」として言ってる。でも、「ありえない」とまで言えるのかと思いながら、穴だらけになるビルを見てい…

『沈黙の艦隊』北極海大海戦

『ゴジラ-1.0』にアカデミー賞をもたらした白組は、やっぱり海戦を描かせると無敵。 Amazonプライムでこの前段を観たときはまだ『ゴジラ-1.0』の前だったから、白組に意識が行ってなかったけど、あの時点で『ゴジラ-1.0』の成功は約束されてたのかと思う。 …

オスロ、3つの愛の風景 より『LOVE』ネタバレ

ダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督の三部作の完結編。これが完結編なのはよくわかる。いちばん大人。これがいちばん好きかな。それに、これがいちばん「オスロ」を感じさせる。この三部作全体の主役があるとすれば、それはオスロって街なんだなって思わせて…

エミー賞受賞式が大荒れなんだけど

9月14日にロサンゼルスで行われたエミー賞の受賞式で、受賞者のひとりハンナ・アインバインダーが「ユダヤ人として」ユダヤ人とイスラエルは違うと「パレスチナに自由を!」と叫んでスピーチを締めくくった。www.huffingtonpost.jp また、同じ受賞式で、…

『遠い山なみの光』ネタバレ

ひさしぶりに盛大にネタバレを書くことになったのは、最近、原作小説を読み返したばかりというだけでなく、この映画のエグゼクティブ・プロデューサーが原作者のカズオ・イシグロだとわかったからで。 前に書いたとおり、石川慶監督の原作改変のやり方には『…

オスロ、3つの愛の風景 より『DREAMS』ネタバレ

ダーグ・ヨハン・ハウゲルードっていうノルウェーの映画監督の「オスロ、3つの愛の風景DREAMS LOVE SEX」が、「どういうこと?」って感じで公開されている。 今年は何か3作品まとめて公開が流行ってるのか、近いところでは「ショーン・ベイカ…

『パルテノペ ナポリの宝石』ネタバレ

8月22日に公開されていたのをうっかり見逃すところだったのは、パオロ・ソレンティーノ監督だと気が付いてなかったから。そんなに観てるわけではないが、この人の『グランド・フィナーレ』って映画は、ゴージャスな絵と思索的な内容で、すごく気に入って…

『ふつうの子ども』ネタバレ

結局、『遠い山なみの光』は観に行かなくても済むかもしれない。今週はいい映画が連続で手が回らないかもしれない。でも、原作小説を読みなおす機会ができてよかった。 『ふつうの子ども』は『そこのみにて光輝く』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保…

『壁の外側と内側 パレスチナ・イスラエル取材記』ネタバレ

川上泰徳監督の舞台挨拶があるのは、こないだ『テイクアウト』を観に行ったときポスターで確認していたが、映画の舞台挨拶に懐疑的になる癖が出て、あれこれ思い悩んでいた。というのは、偶然、観るつもりにしていた映画がちょうどその時間帯に折り重なって…

ショーン・ベイカー初期傑作選 から 『テイクアウト』ネタバレ

『テイクアウト』も見逃さなくてよかった。十三駅前の第七藝術劇場ってところでやってた。十三って駅は乗り換えで頻繁に使うが、ここで降りたことは一度もなかったことに気が付いた。 『フォー・レター・ワーズ』(2000)が大学生のリユニオン・パーティーの…

『亀は意外と速く泳ぐ』『リンダ リンダ リンダ』『8番出口』ネタバレ

『亀は意外と速く泳ぐ』『リンダ リンダ リンダ』『8番出口』と3本続けて観た。 『8番出口』は言わずと知れた新作。『リンダ リンダ リンダ』『亀は意外と速く泳ぐ』はともに2005年の映画の再上映なんだが、わたしにとってはどれも初見。そういうフラ…

ショーン・ベイカー初期傑作選から『プリンス・オブ・ブロードウェイ』

前に書いたとおり、ショーン・ベイカー初期傑作選のうち『テイクアウト』を除く3本は観た。『テイクアウト』を見逃したのは、これも前に書いたとおり『となりの宇宙人』があまりに不入りだったために風邪をひいてしまったから。 しかし、『となりの宇宙人』…

ショーン・ベイカー 初期傑作選から 『スターレット』ネタバレ(オチまで言う)

夏風邪は冗談じゃなく、ショーン・ベイカー初期傑作選の『テイクアウト』は見逃してしまった。9月に京都でやるみたいなので出かけるかも。 『フォー・レター・ワーズ』(2000)、『テイクアウト』(2004)、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』(2008)、『…

『大長編 タローマン 万博大爆発』ネタバレ

こういうことを言うとあれだけれども、今年観た映画の中でいちばん感動したかもしれない。 と言いつつ、忘れっぽいだけかもしれないので振り返ってみると、『国宝』よりはギリギリこっちの方が好みで間違いない。しかし、今年もいい映画が多かったからなぁ。…

『中山教頭の人生テスト』ネタバレ

佐向大の『中山教頭の人生テスト』と、二ノ宮隆太郎の『逃げきれた夢』は、どうしても比べてしまう。 『中山教頭の人生テスト』では渋川清彦が、『逃げきれた夢』では三石研が、それぞれ学校の教頭を演じている。しかも、どちらもその教頭が主役。そして、ど…

『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』

この夏、『鬼滅の刃』以外で満席になる映画なんてあるのかと思ってたけど、これは満席だった。 映画館が明るくなって、前の席に座ってた女の子が隣の子に「こんないい映画教えてくれてありがとう」って泣いてた。思わずツッコミたくなったが、救急医療のスリ…

『となりの宇宙人』ネタバレ

私を含めて三人しか観客がいなくて夏風邪をひいてしまった。 東京公開からだいぶ日にちがたっての地方公開なので、口コミが広がって敬遠されてるかも。『近畿地方のある場所について』と『劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション』が満席だったので…

グレタ・ガーウィグ『バッグヘッド』『ナイツ&ウイークエンズ』ネタバレ

グレタ・ガーウィグ監督作品は『バービー』しか観てないが、素晴らしい映画だったので悪い印象は持ってない。 でも、ノア・バウムバックが圧倒的に好きで、その印象はごちゃごちゃになってると思うことがあり、ときどき「あれ?、グレタ・ガーウィグって好き…

『入国審査』ネタバレ

昔、加曾利隆さんが書いてたけど、世界をバイクで旅してまわる猛者たちでも、国境が近づくと胃が痛くなるのも珍しくないそうだ。 入国審査ってのは、入国させるもさせないも審査官の気分次第なんで、ろくでもない審査官にあたるとひどいことになる。 日本の…

『KNEECAP/ニーキャップ』ネタバレ

アイルランドのラッパートリオの誕生秘話とでもいうべき映画。 なんだけど、どこまでホントなのかまったくわからん。というのも、ニーキャップの3人をニーキャップの3人自身が演じているので。彼らを知らない私には、ホントに全部本人なの?と思うくらいビ…

『未来への警鐘 原発を問う』ネタバレ

世代的に核戦争の恐怖が遠のいて、むしろ、現実的な脅威は気候変動の方だというのは、この暑さの中で聞かされれば納得せざるえない。原子力発電がCO2排出を抑制するのは、それこそアイゼンハウワーとかJFKの時代、原子力が夢のエネルギーだった時代の…