映画

『アーガイル』ネタバレ

マシュー・ボーンの『アーガイル』の予告編がすごく面白くて、ブライス・ダラス・ハワードが演じる作家エリー、彼女の書くスパイ小説が予言のように現実の事件が起こる。それで、現実のスパイ組織に追われることになる。 この謎解きがなかなかよくできていて…

『ボーはおそれている』

2月16日に公開された『ボーはおそれている』を今さら観た。3時間となるとよほど観たい映画でないとぐずぐずしてしまう。 アリ・アスター監督の『ミッドサマー』は観たけど、世評の高さほどには好きじゃなかった。あのカルトな感じが私にはステレオタイプに見…

『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』

いい映画が泣けるとは限らない。最近、いいけど泣けないのが続いたけど、これは『コット、はじまりの夏』以来。だいぶ質は違う涙だけれども。 リトル・リチャードをはじめ、ビートルズ以前のミュージシャンは全員ひとつのフォルダーに入ってる。意識してとい…

『Here』『ゴースト・トロピック』

ベルギーの映画監督のバス・ドゥヴォスという人の作品『ゴースト・トロピック』(2019)と『Here』(2023)を続けて観た。 「ほぼ日」によると、ベルリン映画祭で一目惚れした人が買い付けてきたらしい。 出演者やオシャレなクレジットが共通していて、独特…

『春の画 SHUNGA』

大英博物館で好評を博した「春画展」が、本国日本では3年も宙に浮いたまま凱旋開催されず、結局、大英博物館の展覧会とは違うかたちで、改めて永青文庫で開かれることになった経緯を描いた映画『春画と日本人』も面白かったし、勉強になったが、今回の映画は…

『落下の解剖学』ネタバレ。

雪の山荘でひとりの男性が転落死する。その殺害を疑われた妻をめぐる法廷劇。というと、例えば、三谷幸喜の『12人の優しい日本人』も、ホロコーストの有無をめぐって争われた『否定と肯定』も、コミカルであれシリアスであれ、真実をめぐって争う両陣営のや…

『夜明けのすべて』

三宅唱監督新作。 この人の過去作品では佐藤泰志の小説を映画化した『きみの鳥はうたえる』を観た。これは原作も読んだので比較できるが、ラストが原作とまったく違う。このラストを撮りたいがためにこの原作を選んだんじゃないかと思うくらい。原作をよく読…

『一月の声に歓びを刻め』ネタバレ

三島有紀子監督作品では『幼な子われらに生まれ』が印象に残っている。浅野忠信、田中麗奈、宮藤官九郎、は記憶に残っていたが、あの時の田中麗奈の連れ子を演じていた子は南沙良だったようだ。 重松清の小説が原作、そして、脚本は荒井晴彦だった。この布陣…

『コット、はじまりの夏』

今年観た映画の中では今のところこれが最良。 個人的には小さい女の子が主役の映画はどうも合わないのだけれど(例えば『秘密の森の、その向こう』とか、セリーヌ・シアマ監督では名作だった前作『燃ゆる女の肖像』と同じくらい評価が高いのが、わたしはよく…

『ファースト・カウ』『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

この2つの映画はつまり「ファースト・カウ」と「レイテスト・カウ」。 アメリカ人(にかぎらず、だろうが)は、ずっと貧しさから抜け出そうともがいてきたって話なんだけど、「ファースト・カウ」のWEBには「おいしい話にご用心」とキャッチコピーがあって…

『哀れなるものたち』ネタバレ

「クリトリス」がフェミニズムの用語であることをたぶん日本人はなかなか理解しにくい。映画がクリトリスについて語っている場合、フェミニズムについて語っていると考えてよい(『あなたを抱きしめる日まで』のジュディ・デンチでも)。 クリトリスの切除は…

『ヤジと民主主義 劇場拡大版』

マスメディアを信用しなくなってしまっているので、たまにこういうのにぶつかると愕然とする。 今、素人がスマホで動画を撮れるって時代になってホントによかったと思う。文字メディアで聞いただけなら到底信じられなかった。 選挙演説に来てる、その候補者…

『レザボア・ドッグス』

『レザボア・ドッグス』を映画館で観た。当時、画期的でセンセーショナルだったのがよく分かる。 去年、『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』を観たが、タランティーノの撮影現場は実に楽しそうだった。 シーンを撮り直す際に 「OK、だけども…

『サン・セバスチャンへようこそ』

『レイニー・デイ・イン・ニューヨーク』がクランクアップしたのは2017年だった。日本では2020年に公開されたが、本国アメリカではいまだに公開されていない。 それは、ローナン・ファローの言いがかり、それも、#metooに絡めた言いがかりだったので、さもウ…

『ゴーストワールド』

1月17日も、うっかり忘れて通りすぎることもあったくらいだが、今年はやはり意識した。 しかし、私だけでなく、あれが100年に一度のまがごとなんだろうと、良くも悪くもそう思ったはずだった。 少なくともあれから、こんなに長く、断続的に大災害に悩まされ…

『エマニエル夫人 4K レストア版』

レディズムvs.フェミニズムって考え方もあると思う。フェミニズムの対義語がマッチョイズムだとしたらダンディズムに対立する概念としてレディズムはある。フェミニズムは、つまり、マッチョイズムなのである。 おそらくリベラリズムが力を失っていく同じ道…

『枯れ葉』

今年の映画初めは、アキ・カウリスマキの『枯れ葉』。ですけど、満席でびっくり。 これ が、 こう ですから。 引退を撤回して5年ぶりにとった映画は、ケレン味のないまっすぐなラブストーリーで、トルストイが老年に書いた『復活』のみずみずしさを思い出さ…

『リアリティ』ねたばれ

わたしはドキュメンタリーが好きなのでこういう映画は大好き。何とFBIの尋問を録音したテープをそのまま映像に再現している。したがって82分と尺もタイト。 FBIの尋問テープを音声として流しながら口パクで演技すれば、第一稿は出来上がるだろうって感じ。冒…

『ほかげ』

不思議なんだけど塚本晋也監督の新作『ほかげ』は、山﨑貴監督の『ゴジラ-0.1』とは共鳴しあっている。いくつかのシーンは同じ場所かと見まがうばかり。 趣里さんの寝ている焼け残った居酒屋の周囲、ほんの半径2、3mしか写してないけど、それでもう町全体の…

『きっと、それは愛じゃない』 Xmas〜大晦日の間にちょうどいい映画 ネタバレ含む

クリスマスから大晦日までのこの時期って特別な呼称はないけど、なんとなく他の時期とは違う独特な雰囲気がありますよね。『きっと、それは愛じゃない』は、この時期にちょうどいい感じです。 クリスマスのほっかほかデートムービーではなく、お正月の大衆娯…

『PERFECT DAYS』

ヴィム・ヴェンダースの日本好きというか、小津安二郎に対する敬愛は、『東京画』などで知っているけれども、『東京画』は『東京画』と言いつつ、記憶に残っているのは笠智衆との対話って感じで、エッセイ漫画ならぬエッセイ映画って感じ。ヴィム・ヴェンダ…

『蟻の王』ネタバレ

食傷気味というよりもう完全に飽き飽きしているLGBT映画なので、珍しくイタリア映画で、ブライバンティ事件という実話を描いているってことでなければ観にいかなかった。それに「蟻の王」ってタイトルが当然ながら『蝿の王』を思い出させてちょっと魅力的だ…

『正欲』『市子』『隣人X -疑惑の彼女-』まとめてネタバレ

この3作品を並べて評するに意味があるかどうかようわからん。 でもまあ、立て続けに観ちゃったから、何となく共鳴する。3作品とも孤独な女性のストーリーとして観ちゃった。だから、『隣人X -疑惑の彼女-』も、上野樹里が演じる柏木良子の物語として観ちゃ…

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

最近観た映画で泣けるって意味ではこの映画が一番だろう。 ただ、残念ながら他に言うことがない。 ある日街を歩いている主人公に女の子が近づいてきて 「代弁してくれてありがとう」という。 フランスが、あのテロの直後、イスラモフォビアからなる憎しみの…

『ゴジラ-1.0』ネタバレ

封切からほとんど一ヶ月たって今更『ゴジラ -1.0』を観た。 近年、映画の公開数が多すぎる。で、観たいと思っている映画を見逃す。先月はひと月で12本観てる。平均して1週間に3本観ている。それに加えて、Netflixで『ザ・キラー』と『ミュンヘン』を観たのだ…

『花腐し』

『花腐し』は、松浦寿輝の芥川賞受賞作の映画化でもあるけれど、と言いつつやはり、荒井晴彦のシナリオという惹きが強いか。 というのは、『赫い髪の女』は、中上健次の短編が原作なんだけど、原作とはほぼ違うものだった記憶。 モチーフもピンク映画の終末…

『熊は、いない』『君は行く先を知らない』

イランには優れた映画監督が多い。その中で、ジャファール・パナヒ監督は、特殊というか不思議というか、イランの外から見ると謎な状態に置かれてきた。2010年に「イラン国家の安全を脅かした罪(?)」を犯したってことで、20年間の映画制作・出国・あらゆ…

『サタデー・フィクション』 ネタバレ注意!

『サタデー・フィクション』のこの「サタデー」は1941年12月6日の土曜日だ。日本で公開するかぎりは、この辺にもっとフォーカスした方が良かったのではないか。 しかも、原作は、横光利一の『上海』上海 (講談社文芸文庫)作者:横光利一講談社Amazonと、虹影…

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』ネタバレ

確かに、観ている最中は時間をわすれて惹きこまれるけれど、3h40minという上映時間はやっぱりひるませる。三連休でなければとても観に行かなかったかもしれない。 しかしながら,退屈な映画で眠気と戦う2時間と同じ値段で、スコセッシとデカプリオの長編叙事…

『パトリシア・ハイスミスに恋して』

パトリシア・ハイスミス、マルグリット・ユルスナール、トーベ・ヤンソンはレズビアン。 マルグリット・ユルスナールは、一般にそんなに有名でもないかもしれないが、トーベ・ヤンソンがレズビアンなのはずいぶん前から知っていた。 これに対してパトリシア…