マシュー・ボーンの『アーガイル』の予告編がすごく面白くて、ブライス・ダラス・ハワードが演じる作家エリー、彼女の書くスパイ小説が予言のように現実の事件が起こる。それで、現実のスパイ組織に追われることになる。
この謎解きがなかなかよくできていて、これをいうといきなりネタバレになるけれども、『ロング・キス・グッドナイト』みたいな流れになる。サミュエル・L・ジャクソンが共通してキャストにいるのもオマージュなのかもしれない。
しかし、『ロング・キス・グッドナイト』の主演は、ジーナ・デイヴィス、彼女はスーパーモデル級の美人。に対して、『アーガイル』のブライス・ダラス・ハワードは、ホントに女流作家体型で、ルックスがリアリティ路線。
この高橋留美子さんみたいな作家さんが元スパイ?。みたいな面白さはあったと思う。シナリオはすごくよくできていて、「え、何?、」「あ、なるほどそうか」ってことの連続。
プロットがどこかで破綻してるかというとそんなことはなく最後まで歯切れよい。
そんなバカな!。てのは、スパイ映画の常道なんで、そこに文句は言わない。
プロットではなく、世界観に綻びが出たかなと思ったのは、敵のアジトに潜入した後のアクション。マシュー・ボーンって、映画監督である一方で、バレエの人(コレオグラファー?)なんだね。今、マシュー・ボーンの「ロミオとジュリエット』が絶賛公演中です。
で、アクションの代わりにバレエをやっちゃった。
まあ、ジョン・ウィックのアクションもダンスみたいなもんだといえばその通りだが、だとしたらコレオグラフが良くなかったんだね。
ちなみに、格闘シーンを振り付ける人も現にコレオグラファーと呼ばれるみたい。
具体的に言えば、サム・ロックウェルがブライス・ダラス・ハワードをリフトアップするのだが、いや無理でしょ。バレバレのワイヤーアクションでしょ。
せっかく、モデルみたいじゃなく、リアルな体型の女性を主人公にしたなら、アクションもリアルにしなきゃならなかったろう。
その意味では、原油のこぼれた床の上をアイススケートで滑走するシーンは有りだったと思う。トリプルアクセルをしないなら、体重が増えてても問題ないから。彼女の見せ場はあそこだけで良かったと思う。リフトアップは無理。
バレエがマシュー・ボーンの強力な手札であるには違いなかった。だからああいうところでつい使っちゃうんだろう。
他は全部よかったんだが、あそこでしらけちゃったな。
言いたいことは「ありえないようないい女を主役に使え?」じゃないよ。リアルな体型のその辺の女性が実はスパイだったって面白さがあのアクションシーンで破綻しちゃったってこと。面白さの質が違いますもん。