《秋冬山水図》、《破墨山水図》、《山水図》、《四季山水区卷(山水長卷)》、《天橋立図》、《慧可断臂図》と雪舟の6つの国宝が一堂に会す展覧会が、京都国立博物館のみで開催されて、そのあとどこにも巡回しない。その上、それをGWの最中に観に行くって場合、その混雑はいくそばくそと思うじゃないですか?。
ところが入場制限すらしていないし、現に行列すらできていない。途中のラーメン屋には行列ができていたがそれは店舗の規模が違うし。
テレビで見ると、京都はバスが混んで大変だそうなのだけれど、そもそも京都なんて北の端から南の端まで行くとしても、車より自転車の方がふさわしい距離だし、東の銀閣寺から西の金閣寺までなら徒歩で充分だと思うが、そもそもそんな変な旅程を組む人もいないだろうから、JR、阪急、京阪、京福の各駅で電動キックボードのレンタルでも充実させれば、観光にはむしろその方が快適じゃないすかね。
現に、京都駅から京都国立博物館までのわずかな移動中にも、ちょっと目を惹くお店もあれば、高瀬川や鴨川などフォトスポット候補もある。
それはともかく京都国立博物館は常設展すら一切撮影を許可してない。同じ国立博物館でも東京とはえらい違いだと思ってたのだが、おかげでこの来客数だとすれば、オーバーツーリズム対策としてはなくもないのかも。
国宝か否かにかかわらず、わたしが雪舟に魅せられるのは、何といっても《秋冬山水図》の、しかも冬の一幅。画面中央にまるで冬そのもののように錘を垂らす垂直な線。あの線が何を指すのか気づくより一瞬早く、むしろ、冬の冷たさがじわじわと伝わってくる。この絵ほど水墨画とか何かを知らせてくれるものはない。
この絵を見てると、頭の片隅に芥川龍之介の「秋山図」が浮かんでくる。朧げに「この絵のことだったかな」とか思いつつ「いやいや違うがな」と、そんなことを繰り返している。
《四季山水図(山水長巻)》は、以前(2016年)にサントリー美術館で観たときは良さがわからなかった。思い返してみれば、《石山寺縁起絵巻》とか《平治物語絵巻》とか、絵巻をどう観るべきなのかあまりよくわかってない。
しかし、今回の展示では、雪舟の山水長巻を描き写した後世の、雲谷等益や狩野探幽の摸倣作を同時に見られたので、雪舟のうまさがよくわかった。
そういった意味では、重要文化財の《四季花鳥図屏風》は、後に様式化する表現の原形がここにあるようにさえ思えた。
伝雪舟の《富士三保清見寺図屏風》のオマージュについては、狩野山雪の《富士三保清見寺図屏風》が圧倒的。
ユニークさでは曾我蕭白のものもよかった。
狩野探幽はあいかわらずダメ。
富士山の前に何か意味不明なものがある。ここを余白にする勇気がないんだと思う。
《慧可断臂図》は、たぶん雪舟以外にかける人がいなかったのだろうと思う。
予定にはなかったが、京都国立博物館を出ると前に三十三間堂、左に智積院があるので、とりあえず智積院に。
この宝物館は今年の4月に開館したそうだ。思い出してみると、この長谷川等伯の障壁画は以前サントリー美術館の展覧会で観たが、やっぱり京都で観る方がしっくりくる。常設されるのはありがたい。