スーラージュと森田子龍、白髪一雄

 兵庫県立美術館の展示の充実ぶりに驚いた。贅沢と言うべきか。 

兵庫県立美術館
兵庫県立美術館

 スーラージュと森田子龍を観に行ったのだけれど、同時にキース・ヘリング展も開催中。これは森美術館からこちらに巡回してきたものだ。加えて、常設展では白髪一雄の生誕100年記念展示として39点の作品が一挙公開されている。
 キース・ヘリング森美術館で観ていなければ、一日で観終えられたかどうかのボリューム。にもかかわらず、平日とは言え5月1日、一応GWなのに混雑していない。というより、東京の美術館を思えばガラガラ。

兵庫県立美術館
兵庫県立美術館

トーハクの常設展でももっと混んでる。

 ピエール・スーラージュはアーティゾン美術館で《絵画 2007年3月26日》てふ作品一点しか観たことがないがこれが圧倒的な作品で記憶に残った。
 スーラージュが1950年代から日本の書家、森田子龍と交流があったのは、今回初めて知った。
 森田子龍の作品は撮影が許可されてなかったので画像はないが、見比べて納得した。片方は書、片方は絵なのだけれども、うっかり取り違えてしまうほどよく似ている時期がある。
 後年の森田子龍の「漆金」という技法は、書でありながらテクスチャーのこだわりが絵に近い。
 また、スーラージュも日本での個展で「刷け目という言葉を知り、興味を持」ったそうだ。

絵画 130x162cm、 1966年7月22日
絵画 130x162cm、 1966年7月22日

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 テクスチャーや筆触という概念はもちろん西洋絵画にあるし、印象派の多くの画家は筆触を残すことを厭わなかった。それは、モチーフの質感よりもその印象を彼らの絵は捉えようとしたので、移ろいゆく一瞬の印象を捉える即興性には筆触の残るテクスチャーがむしろふさわしかったからだろう。
 それに対してスーラージュの「刷け目」は、そもそもアブストラクトなのでモチーフという概念がない。「刷け目」は表現の痕跡そのもののブツとしてそこにある。
 今回の展示のメインだろうと思うスーラージュの《絵画 324×400cm、1987年》(彫刻の森美術館所蔵)や先のアーティゾン美術館の《絵画 2007年3月26日》には表現であること自体の存在感を、画家がはっきりと意識していることが伝わる。

《絵画 162x130cm、1959年5月4日》大原美術館所蔵
《絵画 162x130cm、1959年5月4日》大原美術館所蔵

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《絵画 100x72.7cm、1953年7月19日》富山県美術館所蔵
《絵画 100x72.7cm、1953年7月19日》富山県美術館所蔵

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ピエール・スーラージュ 《絵画 143x202cm、 1964年11月19日》スーラージュ美術館
ピエール・スーラージュ 《絵画 143x202cm、 1964年11月19日》スーラージュ美術館

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 これに併せて白髪一雄の特集展示を開催するのが渋い。

白髪一雄《天罪星短命二郎》1960
白髪一雄《天罪星短命二郎》1960


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これなんか白髪一雄の足跡がはっきり確認できる。

白髪一雄《懐素上人》
白髪一雄《懐素上人》

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そのほかにも今井俊満堂本尚郎、菅井汲、岡田謙三4人の同時代に海外で評価された抽象画家たちの作品も展示されている。

菅井汲 《雷鳴》1954
菅井汲 《雷鳴》1954

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このような作品にテイストのある人は是非。

www.artm.pref.hyogo.jp