秋葉原の通り魔事件のときに、テレビに出演していた斉藤環というひとが
「戦後の日本の若者は『生物学的謎』と言われるくらい人を殺さない」
といっていたのがずっと印象に残っている。
今週の「爆問学問」進化生物学者の長谷川眞理子の回は、まさにその話だった。
世界中のどの社会にも共通していえることは、二十代前半の男性がもっとも人を殺す。カナダの例では他の世代の5倍ほども殺している。
日本でも戦前までは、人口100万人に対してだいたい3〜40件ほどの殺人件数で安定していたのに、1955年頃から急激に減り続け、特に、男性の殺人は1955年の5分の1にまで激減している。女性の殺人件数はあまり変わらない。
「昔はよかった」とか「最近の若い者は・・・」とかいう年寄りの文句は、こと殺人にかんしては使えないわけである。
しかし、残念ながら、長谷川眞理子が研究しているのは、殺人の動機が多くの推理小説の定説と違って、論理や倫理の支配下にはないということなのである。殺人はもうすこし原始的な欲求によって引き起こされるようなのだ。
となると、若者が人を殺さないこの日本という国では何が起きているのか。
この国で自殺が増えてきているのは一方で確かなことである。自殺は人間しかしないそうだが、殺人が進化の過程で脳に組み込まれたプログラムであるとすれば、自殺はどうなのだろうか。
自殺の動機も、殺人の動機以上に他人には、つまり、理屈では理解できないことが多い。