東洋陶磁の美

knockeye2012-03-31

 春の嵐。つよい南風が吹き付けたらしく、朝、部屋を出たとたんに風がなまあたたかい。
 乃木坂で地下鉄を降りて、東京ミッドタウンまではまだよかったが、そのあと六本木ヒルズまでがすごかった。極力地下を通っていったが、最後の六本木駅から、森美術館の入り口までのわずかな区間、ほんの十数メートルだと思うんだけど、風に足許をすくわれかけた。
 サントリー美術館で、「東洋陶磁の美」という大阪市立東洋陶磁美術館のコレクション展示が今週末までだったので。

 ポスターにも使われているこの国宝、飛青磁花生、玉壺春といわれる形の瓶は、やはり何よりもまず目を惹く。高麗青磁青磁瓶もやや小ぶりの玉壺春だったが、なにか完成とか到達とかいうことを感じさせる。
 以前、根津美術館で、玉壺春の青磁ばかりをずらりと並べて展示していたことがあったが、あれは壮観だった。
 ずっと時代を遡った唐三彩も華やかだけれど、中国の文化は、青磁の自然界には存在しない色、玉壺春の人為の極みのフォルムへと収斂していくのかも。
 北宋汝窯青磁は「雨過天青」と呼ばれたそうだ。また鈞窯の‘月白’という柔らかな青の茶碗も美しかった。高麗青磁のやや緑がかった青を‘翡色’といったことは以前にも書いた。
 陽が透けるほど薄い白磁の肌に、線刻された蓮の花が浮かび出るといった中国の洗練とはまたちがって、朝鮮の陶磁器には、独特の大らかさがある。
 これは、粉青の扁壺に線刻された鳳凰文。

 鳳凰が三羽も群がっているのがまず楽しいのだけれど、鳳凰っていうか、クリオネパウル・クレーじゃないの?みたいな感じ。
 朝鮮といえば、例の可愛いトラもいる。

 また、下のような草花は、たぶん誰も描けないと思う。

 これを見ていると、春が来て、花が咲いて、ほんとによかったなと思う。