私の文学放浪 

芍薬

吉行淳之介 『私の文学放浪』 を読んだ。
私の文学放浪 (講談社文芸文庫)
早速引用。

この時期、私に大きな影響を与えた二冊の本がある。トマス・マンの「トニオ・クレーゲル」と「梶井基次郎作品集」である。前者については以前書いたので省く。朔太郎ばりの詩にも太宰治風の文章にも、私は嫌悪を感じるが、梶井をおもわせる文章には逆に好感を抱く。その理由は、梶井の文章は発想のときの作者の姿勢もふくめて、文章というものがそうあらねばならぬ究極の形とおもえるからで、梶井風の文章からは模倣の感じが伝わってこないためとおもえる。

梶井基次郎は、高校生のときに耽読した。今でも、当てのない旅をする時は、「冬の蠅」の主人公に、自分をなぞらえている気がする。夭折した作家なので作品が少ない。それで書簡集まで読んでしまった。書簡集が文庫になっていたのは、人気があった証拠だろうと思う。そもそも高校生の私は、「書簡集」という言葉の意味さえ知らず、その本を買ったのだ。
梶井基次郎の文章は、夏目漱石を模範としていたはずだ。漱石に心酔していて、小説を書写していたりしたと思う。となると、文章の系譜は、夏目漱石梶井基次郎吉行淳之介ということになる。この鉱脈は、個人的には新しい発見で、興味深い。

まだ暫定的だと思うが、27日に移動ときまった。かなりあわただしい。これから富山を出て、神奈川に入るわけだが、神奈川のどこかということは、あえては書かずにおく。特に隠す必要もないが、追々明らかになっていく方が面白いかも知れないし、それに、私自身の内部でも、行く先の実態は追々にしか明らかにならないだろうと思うのだ。

今週の金曜に有休を取った。テンコさんという人がロシアからアフリカに向け旅立つのをお見送りに行く。ブログはこちら

写真は芍薬。このところ、芍薬で検索に引っかかっているみたい。