ロリータ

knockeye2007-01-09

ロリータ (新潮文庫)

ロリータ (新潮文庫)

オビにこうある。
「21世紀最良の翻訳」ー大江健三郎
「名作はついに名訳と出合った」ー丸谷才一
かつて挫折したひとりとしては、責任を翻訳になすりつけるためにも、この新訳に飛びついた。で、たしかに読みおおせてしまった。つまり、今度の若島正の翻訳がすばらしいということになるのだが、ここまで新訳の評価が高いと、旧訳の面目はまるつぶれなわけである。
外国語で書かれた小説を読むときは、当然ながら、翻訳はホントに大事で、個人的体験をいうとシュトルムの「みずうみ」を読んだあと、「白馬の騎手」を読みかけて投げ出してしまったことがある。
復刊ドットコムによると、イーヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』の吉田健一訳が復刊されたそうだ。倉橋由美子が絶賛したためであるかもしれない。わたしは去年古本屋で買って読んだが、一年間の読書のなかでもかなり印象的なものの一つであった。古本屋で手に入らない人には耳寄りなはずだ。
しかし、ナボコフの翻訳は難しいんでしょうな。「人は小説を読むことはできない。ただ再読することができるだけだ。」と語っているそうだ。この小説の読後、ページを繰りなおさない人がいるだろうか。推理小説としても読むことが可能で、読み落としているところがずいぶんありそうなのだ。
訳者あとがきを引用しておくと

しかし、ここであえて言うなら、『ロリータ』の本当に凄いところは、そうしたすべての要素を含んでひとつの小説にまとめあげている点にある。

大江健三郎の解説には「野心的で勤勉な小説家志望の若者に」という副題までついている。こう書いている。

およそ常人にナボコフの言語感覚の高みにいたることはできない!