渡辺喜美の離党

渡辺喜美の離党は、官僚主導vs政治主導という対立軸で小泉改革を捉えてきた人にとってはすんなりと理解できるはずだ。
選挙を経ずに三人も総理大臣が代わって、麻生政権は先んずる三政権の政策を180度ひっくり返してしまっている。今の衆議院における自民党議席数は、国民がいわゆる「郵政選挙」で投じた票であることを思えば、これが国民への裏切りであることはいうまでもない。支持率は落ちて当然だ。
景気優先といっているが、要するに既得権益に還流するバラマキ行政の復活にすぎない。
自民党の中で改革派と族議員が対立している。その対立軸はよく見えるし、また、今後、一般国民の生活にも大きな影響を及ぼす実質的な対立軸だと思う。
野党は、今回の渡辺喜美の離党を「歓迎する」といっているみたいだが、そういう場合ではないと思う。与野党の対立軸がかすんできてしまうからだ。
特に問題なのは国民新党の扱いで、議席数をかき集めるために「郵政民営化反対」に合意したが、もともとは民主党郵政民営化に賛成していたはずなのだ。
今、自民党の主流が反改革派であり、それに対して国民支持率が20%を切る状態であるとすると、民主党郵政民営化に対してとっている日和見主義的な態度は、国民の不信を招きかねない。それに、次の選挙で自民党議席を減らせば(どうあっても減らすに決まっているが)選挙後国民新党は、まず自民党に寝返る。
今の状況では、渡辺喜美とコンタクトを取り、自民党の切り崩しを最も効果的に行なえるようにしながら、国民新党とは距離をおいて、というよりむしろ、いいタイミングで国民新党との間に仲たがいを演出して、改革に積極的な民主党という印象を国民に訴えるべきだと思う。
そうしなければ、民主党は選挙の争点を失う。定額給付金と派遣切りではテーマが一過性すぎて、争点として弱い。それでは、選挙に勝ってもその後の政策の推進力が維持できない。改革か否かという自民党内の対立軸の方が目立ってしまう状況は絶対に避けなければならない。
今度の選挙は改革を旗頭に戦うべきである。そうすれば、選挙後、自民党内の改革派も離反しやすい。
しつこいようだが、敵失で勝ったというだけでは政権運営の推進力が出てこない。なにしろ本当の敵は霞ヶ関の官僚なのである。