「ゆでガエル」のその後

knockeye2009-02-21

テレビで青木さやかを見ていて、ふと、アン・タイラーの『結婚のアマチュア』を思い出した。
あの小説の重要なところに「ゆでガエル」の譬え話がでてくる。水をはった鍋に蛙を入れて少しずつ暖めていく・・・というアレ。失われた十年のころには頻繁に耳にした。
私たち日本人という蛙はバブル崩壊以後10年もの間、少しずつ煮えていく鍋の中で、ただおろおろしていた。
最近あのたとえ話を聞かなくなったが、私たちはその後日談の世界に今生きているという気がして仕方がない。
日本人という蛙はまだ鍋の中にいる。そして
「水が冷たいじゃないか。誰が火を消したんだ」
と、文句を言っている。鍋の外に出ればいいんじゃないのか。どうしても鍋の中で生きていたいのか。
春の服を買いに出たのだけれど、もうすぐ三月だというのに、春物を扱っているのはユニクロだけ。他の店はまだ冬物のバーゲン中だ。
何日か前に文芸春秋の3月号を買った。「反貧困」の湯浅誠の対談が載っているのと、五木寛之山折哲雄の「不況と親鸞」というちょっとユーモラスな予感のする対談、それに芥川賞受賞作「ポトスライムの舟」はどうでもよいのだけど、サブタイトルが「派遣世代の新しい文学誕生!」って。
定期購読していない雑誌を手にとるときは、サブタイトルが笑えるときのことが多い。今でも思い出してときどき笑う何かの見出しに「ストリートセレブの云々」というのがあった。
しかし、一番読み応えがあったのは、野口悠紀雄だ。
「GDP10%減、大津波が来る」
年率換算12.7%減の発表を早くに先取りしている。
トヨタなどの輸出産業がわが世の春を謳歌できたのは、アメリカの住宅バブルとともに日本の円安バブルがあったためだという。
その二つのバブルが同時にはじけたのに加えて、アメリカへの輸出に頼ってきた中国も不況になり、日本はアメリカと中国、二大輸出市場縮小のあおりを受けている。
したがって、日本の被った打撃は他の国よりも大きくなる。日本は他の国よりましという麻生政権の認識は甘かった。
円安バブルを招いたゼロ金利政策内需にとってはマイナスに働いたはずだ。本来そこまで金利が低いと預金は投資に回るはずなんだけれども日本の場合は、失われた十年の印象が強すぎてなかなか投資に回らなかった。
不正の責任を銀行や金融業者がとらなかったことが、投資にたいする信頼を失わせたということも大きいと思う。
バブルの前にも後にも「○○証券」という看板が平気であがっている。せめて看板だけでもかけ替えたらどうよ。庶民としてはそりゃためらうよね。
話がそれた。景気浮揚のためには長期的には内需を拡大していかなければならないが、短期的には財政出動しかない。
「しかし、」と野口悠紀雄はいう。
「こうした政策を考えるとき、最大の障害となるのが、政治の貧困である。道路族や建設族の議員が群がってきて、地方に道路や箱もの施設を作りたがるに違いない。」
つまり、日本の場合、財政出動をしても既得権益のふところに入るだけで国民生活は豊かにならず、国の借金が増えるだけなのである。
ここでもう一度かんぽの宿問題を考えてもらいたい。2500億円を投じた事業が売却時には100億円程度にしかならない。しかも毎年の赤字は膨らみ続ける。その赤の部分は誰のふところに入ってるの。
国が2500億円を投じた事業なら、払い下げのときには毎年利益を生み出していなければならないはず。入札にすれば希望者が引きも切らなかっただろう。
かんぽの宿グリーンピアも、国民の金がどこへ消えていくのか、その仕組みを白日の下にさらしているだけではないか。
族議員、官僚支配、利益団体といった既得権益の構造を改革しないかぎり、国民のカネは永遠に彼らの食い物になるだけなのだ。
GDPがマイナス10%になるということは、経済の水準が2002年ごろの水準に戻るということだそうだ。放置すれば失業者はさらに125万人増加する。
私たちはまた「ゆでガエル」の昔に戻る。

かんぽの宿」のオリックス不動産への一括譲渡問題を受け開かれた日本郵政の第三者検討委員会初会合。(右手前から)川端和治委員、黒田克司委員、渋井和夫委員と日本郵政西川善文社長(左中央)=東京都千代田区で2009年2月20日午後5時14分、内藤絵美撮影 「かんぽの宿」のオリックス不動産への一括譲渡問題を受け開かれた日本郵政の第三者検討委員会初会合。(右手前から)川端和治委員、黒田克司委員、渋井和夫委員と日本郵政西川善文社長(左中央)=東京都千代田区で2009年2月20日午後5時14分、内藤絵美撮影

 「かんぽの宿」の一括譲渡問題で、日本郵政は20日、外部の専門家による第三者検討委員会の初会合を開いた。検討委員会では数カ月程度をかけ、かんぽの宿を含む不動産売却ルールを作成し、報告書としてまとめる。日本郵政はこのルールに従って、不動産売却を進める考えだ。

 検討委員会のメンバーは、川端和治・元日本弁護士連合会副会長▽黒田克司・日本公認会計士協会副会長▽渋井和夫・日本不動産鑑定協会常務理事の3人。この日、メンバーの互選で、川端氏が委員長に選ばれた。

 委員会の冒頭で、日本郵政西川善文社長はかんぽの宿事業譲渡について、「収益性、効率性と公共性の両立を図ることが大きな課題。経済情勢が悪化するなかで焦りはなかったか、地元への配慮は十分だったか反省すべき点はあった」とあいさつした。

 委員会では、「売却の経緯が不透明」という鳩山邦夫総務相の指摘を踏まえ、(1)適切な譲渡先や譲渡価格の決定方法はどうあるべきか(2)不動産として売却すべき資産と、(手法として)事業譲渡を用いるべき資産をどう区分するか(3)情報公開のあり方−−を主な論点として、売却ルールを整理していく。

 かんぽの宿の入札や、民営化前の旧日本郵政公社時代の不動産売却の手続きが適切だったかどうかについても検証する。委員会は非公開だが、会議資料や議事録は日本郵政のホームページで原則として公開する。

 かんぽの宿は年間50億円規模の赤字事業。オリックス不動産への一括譲渡を白紙撤回したことで、日本郵政は当面、かんぽの宿の経営改善も進め、事業価値の向上を図る。【前川雅俊】

【ローマ藤原章生】ローマで開かれた先進7カ国財務相中央銀行総裁会議G7)で、ろれつが回らない状態で記者会見に出席し、辞任に追い込まれた中川昭一前財務・金融担当相が、会見直後に訪れたバチカン博物館で陳列品の石像に触れるなどマナーの欠ける行いをしていたことが、同行者らの証言でわかった。中川氏は博物館でも、政府代表とは言い難い姿をさらしていた。

 今月14日午後4時(日本時間15日午前0時)すぎ、ローマ中心街のホテルで、眠り込みそうな表情で会見を終えた中川氏は、その足で博物館に向かった。イタリアを去る間際の2時間の「視察」で、当初から予定に組み込まれていた。

 財務省職員を伴った中川氏を現地の大使らが案内する形で、一行10人は博物館職員と共に館内を回った。午後4時の閉館時刻を30分ほど過ぎていたため、一般客はいなかったという。

 その際、中川氏は館内を好きに歩き回った。触ることを禁じられている石像を2回ほど触り、一度は警報のブザーが鳴った。

 疲れていたようだが、酒臭くはなく、酔っている様子はなかったという。同行した上野景文駐バチカン大使は「確かに、天皇陛下が(礼儀正しく)視察するような形でなかった。美術が好きで触ってみたかったようだが、周囲が振り回されたり、騒ぎになるようなことはなかった」と話している。

 10年連続で赤字予算を組んできた大阪府の一般会計当初予算案が、2009年度に黒字に転じる見通しとなった。

 世界的な景気後退の影響による税収減などで450億円の歳入不足が懸念されていたが、橋下徹知事の08年度の財政再建で、年度末に数百億円の余剰金が生じる見込みとなり、就任2年目で、11年ぶりの赤字脱却を果たす見通しが立った。

 府の一般会計当初予算案は、1999年度に169億円の収支不足に陥って以降赤字が続き、01年度からは借金返済のための減債基金から430億円〜1145億円繰り入れてきたが赤字は解消できず、08年度も50億円の歳入不足だった。

 橋下知事は、08年度の予算編成で、職員給与を都道府県最低水準まで引き下げたほか、私学助成や市町村補助金を削減、減債基金の繰り入れも中止し、1100億円の収支改善を達成。

 こうした取り組みと経費節減などで、年度末に財源として回せる数百億円の余剰金を財源とし、行政改革推進債などと合わせると、税収減を見込んでも黒字転換が可能になった。

 08年度に185億円発行した赤字債の退職手当債も、09年度は発行しない方向で調整を進めている。