岡田克也、古賀茂明

 今日、「田勢康弘週刊ニュース新書」に岡田克也が出ていた。
 民主党の幹事長として、自民党、その他の野党と交渉しているつもりらしいが、今、自民党が提示している条件は、とにかく‘菅直人ではダメだ’といっているだけ。そして、そこに‘なぜダメか’という理由はない。
 もし、そんな条件を政権与党が呑むということになったら、参議院で逆転した野党は、自分たちの望むままに、総理大臣の首を挿げ替えられることになってしまう。
 こんなふざけた条件を唯々諾々と丸呑みする与党の幹事長が、日本の政治史上いただろうか?
 それのみか、いま、岡田克也のやっていることといえば、むしろ、石原伸晃の仰せとあらば、自ら党首の寝首さえかきかねないありさまに見える。
 この人、‘原理主義者’を自称しているが、その意味は、たぶん、ひとつの事象について深層を考えたり、またそれが自分の言動次第でどのような展開になりうるのか、などということについて、考えるのがめんどくさいというだけの人なんだろうと思う。交渉相手として、実に、与しやすかろうと思う。
 この岡田克也に比べれば、菅直人の存在ははるかに大きい。
 自民党経団連が、菅直人に辞任を要求している根拠は、菅直人自身が辞任を表明したということ以外にはないという点を、以前、強調しておいた。
 しかし、その後よく考えてみると、‘そもそも菅直人が辞任を表明したのか’ということ自体が、かなりあやしくなってきた。
 すくなくとも、菅直人自身の口からは、一度も聞いていないし、岡田克也も最初は‘辞任を表明していない’と言っていたのだった。
 それで、いったい誰が‘菅直人が辞任を表明した’と言ったのだったかなと思い返してみると、思い浮かぶ顔ぶれは、まず、鳩山由紀夫石原伸晃山本一太、そして、新聞、テレビなどのマスコミだった。
 新聞やテレビのニュースをほとんど斜に構えてみている私だが、うっかりする拍子には、やはり鵜呑みに信じてしまう。
 マスコミが、一面トップで‘菅直人が辞任を表明した’と報じているからそうなんだろうと、うかつに信じてしまっていたが、一国の総理大臣が、国民に向けてみずから辞意を表明したわけでもないのに、辞任を確定的に報じることじたい、そうとうに異常だと感じとるべきだった。
 おそらく、G8帰国後の鳩山由紀夫との会談、両院議員総会、翌朝の新聞記事まで、辞任を既成事実化するために、お膳立てした人物がいたのだろう。
 鳩山由紀夫の‘ペテン師発言’について、小沢一郎の脅しが効きすぎたのだろうと思っていたが、そう考えると、むしろ、事前のシナリオどおりにことが進まなくて焦っていたと考える方が自然のようだ。
 韓国政府が、「世界のスマートグリッド市場で30%のシェアをとる」と宣言して、官民一体となった努力を始めたのは、2009年、おととしのことだった。
 一方、わが国では、奇しくも今日、電車で、週刊文春週刊新潮の中吊り広告を見て笑ってしまったのだけれど、‘孫正義の陰謀’みたいな文字が、申し合わせたかのように躍っていた。
 いまだ収束のめどさえ立たない原発事故が起こっている国で、企業家が太陽光発電を推進しようとすると、マスコミにたたかれるのか?
 マスコミも政治家も官僚も、既得権益をまもること以外、存在理由がないのだとすれば、もうこの国はダメだろうと思う。若い人たちがそれでいいならそれでいいんだろう。太陽光発電を推進する孫正義が‘強欲経営者’で、東京電力が安い値段で電力を提供してくれる庶民の味方だという理屈で納得できるのがこの国のマジョリティーなら、この国は根っこから腐っている。
 その同じ週刊文春の今週号、阿川佐和子の対談相手は古賀茂明という、現職官僚として、公務員制度改革に取り組んできた人。

阿川 「天下りという慣習については、どう思ってらしたんですか?」
古賀 「最初はそういうもんかと思ってたんだけど、そのうち、自分が何かやろうとしたとき、天下りが邪魔になることが多いと気づいたんです。」
「というと?」
「たとえばこんな規制は要らない、と思ったとき、じゃあ規制を撤廃すればいいかというと、実はその規制のために業界と連絡調整する団体があるんですね。で、そこの専務理事が天下りのポストになってたりする。」
経産省OBが送り込まれてる?」
「そう。もし規制を撤廃すれば、その団体の存在理由がなくなるわけで、それは天下りポストが一つ減ることを意味する。そうすると、その人の行き場をどうするんだと言われるわけ。そんなこと言われてもね・・・。」
「自分で探してくださいって話にはならないの?」
「そういう話にはならない。だったら他に天下りポストつくれという話になってしまう。それだと正しい政策ができないんです。」
「そっかあ。」
「実際、私は明らかに不要だと思われる天下り先の団体を一つ、潰したこともあるんですが・・・」
「へぇ、どうなりました?」
「もちろん事前に上司に相談するわけですけど、局長は『しかし寂しいなあ・・・』と言うんですよ。『ほんとに寂しいよ』って。」
「何が寂しいの?」
「『君はこの団体の担当課長だろう。担当課長なら、もし周りからもうこんなのやめろと言われても、OBのこととかを考えて、いや、そんなことありません、これは必要ですと言って、最後まで頑張るもんだ』と。」
「ひぇー、笑っちゃう。」
「『それを、君が団体をなくしましょうなんて、ほんとに俺は寂しいなぁー。最後まで体を張って抵抗するのが経産官僚だろう』なんて、大真面目に言うわけです。」

 体を張って天下りポストを守るのが、この国の経産官僚の仕事なのだとすると、官民挙げてスマートグリッドの世界市場に挑戦している韓国に、太刀打ちできるはずがない。
 80年代、世界に冠たる環境先進国と目されていた日本が、あれよあれよと他国の後塵を拝したのは、一体なぜなんだろうと訝っていたが、背景にこのような官僚組織がいては、既得権益以外のすべての新しい芽は摘み取られてしまう。成長戦略などあったものではない。
 すくなくとも発送電分離だけでも実現すれば、PPS(特定規模電気事業者)の電力が今すぐに使用可能になるのに、国民に節電を呼びかけながら、自分たちの権益はみじんも手放すまいとするその態度にはおぞましさを感じる。