「キャプテン・フィリップス」

knockeye2013-12-30

 神戸国際松竹で「キャプテン・フィリップス」を観た。
 名優トム・ハンクス(「ウォルト・ディズニーの約束」が楽しみ)ということもあるけれど、この映画が気になったのは、高野秀行の『謎の独立国家ソマリランド』を読んだから。あれを読むとちょっとした‘にわか’ソマリア通になっちゃうので。
 この映画で、いきなり感心させられたのは、登場する海賊の若者が、ちゃんと(?)カート(字幕では「ハッパ」になっていた)を食ってる。なんかちょっと枯れてる感じだし、量も少ないようだが、私自身は本の口絵でしか知らないのだし、高野秀行に「あれですか?」と尋ねてみたい気がした。
 しかも、SEALSだったか、アメリカの専門家でソマリアの言葉をしゃべれるひとが出てくるけれど、その人が海賊の若者に語りかけるのに、きちんと彼らの属する「氏族」をまず話題にする(「tribe」という英単語、杉山清孝とオメガトライブ以来)。高野秀行の本を読んでいたので、これがどれほど重要かがよくわかったが、そういうことをアメリカの海上保安にかかわっている人たちがきちんと理解しているということ、そして何より、この映画の制作者が、ディテールにこだわって丹念に取材していることに、改めて驚いた。
 この映画がすごいところは、トム・ハンクスの演じる一般のアメリカ国民、ソマリアの海賊、イギリスやアメリカの防衛に関わる人たちを、同じ地平において描いていること。けっして単純な西部劇になっていない。
 冒頭、トム・ハンクスキャプテン・フィリップスと、彼を車で送っていく奥さんの会話で映画が始まるんだけど、息子二人の将来を話題にする、あれが要るのかっていえば絶対要る。そこから最後まで演出の歩調が乱れないのは見事だった。

 ところで、新潮社では、日経新聞の記者が書いた竹中平蔵バッシングの本に敗れ去った『謎の独立国家ソマリランド』だけれど、ほかでは順調に受賞を重ねているらしい。

 ナショナル・ジオグラフィックのサイトに高野秀行のインタビューが載っていた。