バナナマンの紅白副音声はよかったらしいね

knockeye2015-01-15

 紅白歌合戦なんてものをまったく観なくなってどのくらいかさえ気にかからなくなっている私のような人も少数派とは言えない時代だろうけれど、去年の紅白にひとつだけ興味がそそられたのは、バナナマンが司会する副音声だった。わたしは「バナナムーンGOLD」のポッドキャストは、基本、毎週聴いているし、本放送の方もラジコで聴きながら寝たり寝なかったりしている。
 松も明けるころになって紅白の話題もなさそうなものだけれど、実際の紅白は観てないわけで、「バナナムーンGOLD」の、年明け1発目は録音だし、2回目でようやく生放送が再開されるわけで、つまり、そのときになって、ああそういや、紅白でたんだったな、そんなこといってたな、くらいのことではある。しかし、ふたりのトークによると、好評だったらしく、本人たちも興奮気味だった。
 まあ、去年末のいつかの放送で「なんか紅白の副音声やることになった」的なことは言ってた。ただ、「なにやんのかわかんない」的なことで、「実は、その他大勢なのかもしれない」とか言ってたんだった。年明けの放送を聴いてたら、「現場行くまで司会とは聞かされてなかった」というお気楽ぶり。「なんかポッドキャストやってる気分だった」というので、じゃあ、面白かったんだろうなと推量できた。
 ポッドキャストバナナマンがいちばん面白い。爆笑問題も面白いけど、あれは本放送の抜粋なので、また話が違う、バナナマンの場合は、ポッドキャストだけで一時間近くやってる。だから、本放送と合わせると三時間ちかく話しっぱなしなわけで、そのへんの突き抜けてる感じが、やっぱ、面白いわけ(ハロウィーンについて話しているうちに、ミニラジオコントみたいになった回なんて抜群に面白かった)。
 関西のタレントが日本のお笑いを占領していた時代てのがたしかにあった。そのピークは言わずとしれたダウンタウンで、そこから後は衰退し始める。ただ、90年代後半のダウンタウンブームのすごさは、今でも覚えている人も多いだろうし、あれを超えるムーブメントはちょっと起こりそうにない。
 笑芸=吉本みたいな図式はとうに壊れたけれど、かといって、今の時代を代表する、いわゆる‘時代と寝た’というような芸人は、今はちょっと見当たらないし、たぶん、芸人自身が、そういう風でありたいとも思っていない。
 そんななかで、バナナマンが放っている狂気はなにかしら異色でつかみきれない。設楽統という人は、由緒正しいツッコミとしての生来の攻撃性と同時に、それについての自省心みたいのがあって、そのレンジの広さが作家性につながってるんじゃないかと推測している。わかんないけど。攻撃的であると同時にまっとうなのは、よき芸人の典型的タイプだと思う。だって19歳のときにつきあった彼女と結婚して、芸能界で成功するって、ため息が出る感じじゃないですか。でも、つっこみはときにきつすぎる。その危うさが面白い。
 日村勇紀のほうは、ものまねがうまかったり、音楽に長けていたり、かるく変態だったりするのだけれど、今度も新撰組がゾンビになる映画で主役をはったりするらしい。よい漫才コンビは、漫才人間と役者人間だと言ったのは、小林信彦だったか、香川登志緒だったか、萩本欽一だったか忘れたけど、それにも偶然合致している。それに、さらに小林信彦が喜びそうな情報をそえるなら、日村さんはタップが踏める。わたしが個人的にこの人面白いなと思うのは、二か三かといえば、二の線なところ。ルックスは見知らぬ外人から「あーゆーこめでぃあん?」って尋ねられる感じなんだが、本人は二の線なのである。これは大事だと思う。
 二の線、三の線って、芸能人を観ていて不思議だなと思うのだけれど、たとえば、島田紳助なんて、漫才ブーム以降モテまくったにもかかわらず、本人はどうしても二の線ではなかった。たぶん、小学校、中学校のときもてるかもてないかで二と三が分かれるんじゃないかと思う。小中でもててたらその先どんなにもてなくても、本人の意識は「二」で、小中でもてなかったら、その先どんなにもてても、本人の意識では「三」なんじゃないかと仮説を立てている。
 設楽さんは「オレは二なんだけど、二なんてたいしたことじゃないよ」ていう感じ。日村さんは「オレはホントは二なんだけどさ」という感じ。この位相の違うふたりの二枚目の組み合わせが、わたしには絶妙に感じられる。
 それから、吉本の芸人と、東京を活動の中心にしている芸人のちがいは、小屋の差。ダウンタウンまでは、花月の板を踏んでいた。仁鶴、やすきよ、カウス・ボタンと同じ客の前でネタをやるわけで、自分の力量はごまかしようがない。良くも悪くもそういうシステムなのである。これに対して、今の東京の芸人の強みは、東京にいろいろある劇場で、自分でライブをやって、自分で客を集める。客が集められるかどうかが勝負なのであって、先輩と同じ板を踏むと言う意識はあまりないと思う。
 善し悪しはともかく、このシステムの違いが関西と関東の芸人の差になっている。バナナマンバカリズム劇団ひとりと、みんな作家性がある。
 それにしても、バナナマンに紅白の副音声をやらせたNHKは英断だったな。今回のことで思ったけど、テレビ離れが進むなかで、副音声はありかも。制作費はやや嵩むか知らないけれど、たとえば、「奥様は魔女」のDVDの副音声にノーラ・エフロン監督の語りがはいってるのがあって、あれは面白かった。大河ドラマの副音声で有吉とか、松本人志とか、ありだと思う。
 DVD出ました。この去年のライブ、すごく評判いいらしい。

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