官僚性善説を信じる日本人、天動説を信じるアメリカ人、どっちがバカ?

 森友問題についてはともかく真相を明らかにしてほしい。いろんな人がいろんな事を言っているが、今のところ腑に落ちる説明に出会わない。
 野党が政権の責任を追及したいのは当然だが、それが目的化してしまって、真相がうやむやになる危険は避けてもらいたい。
 立憲民主党は、結成されてまだ半年、とても、政権を運営できる能力はない。旧民主党ですらあの体たらくだったのである。国民は悪夢を忘れていないと思う。今の野党のはしゃぎぶりには既視感があり、個人的にはトラウマを刺激される。
 今、安倍政権を退陣させたとしても、おそらく政権は自民党内での交代になるだろう。そうなった場合、森友問題は安倍政権とともに葬り去られるだろう。そして、おそらくは野党の勢いも風船のようにしぼむ。
 もし、立憲民主党が将来に政権をめざすつもりなら、目前の安倍政権の攻撃にはしゃいでいる場合ではないし、はしゃげる状況でもないはずなのだ。
 立憲民主党に今求められているのは、安倍政権を倒すことではなく、旧民主党の悪夢を払拭することだと言わせてもらいたい。
 旧民主党政権交代を果たした選挙では、今でも忘れがたいが、小沢一郎は、選挙後一週間も経たないうちに、選挙公約を反故にしたのである。マスコミも「公約にこだわることはない」とこれを擁護した。言うまでもなく民主主義を愚弄する行為だった。
 政権交代を果たしたのは、選挙で票を投じた国民ひとりひとりであったはずだが、小沢一郎は、国民との約束をあっさりと踏みにじって平然としていた。いま、またも敵失に(奇しくも敵の顔は同じだが)はしゃいでいる姿が国民にどう映るかを考えてもらいたい。
 民主党に「立憲」の冠を戴いて再出発した立憲民主党が、ポピュリズムに踊る烏合の衆ではなく、立憲主義と民主主義に基づく国民政党であることを示せるかどうかが、今の立憲民主党にとっての課題であるはずだ。主権者が国民であることを忘れて政争にはしゃいでもらいたくないとは、心ある主権者の願いであると思う。
 郷原信郎このブログによれば、今回の書き換えについては、
「公文書偽造罪等の刑法上の『文書犯罪』が成立する可能性は高くない」
そうである。むしろ、問題は、
「国会での議論において重要なポイントとなる記載を削除した『決裁文書の写し』を真正な決裁文書と内容が同一であるように装って提出するということは、議会制民主主義の根幹を損なう行政機関の国会及び国民に対する裏切りであり、到底許容できないもの」
だが、
「そのような行為は、法の想定を超えたものであり、犯罪として処罰することには、もともと限界がある」
ので、
「『国会』が主導的な立場で調査を行うべきであり、福島原発事故の際に国会に設置された『東京電力福島原子力発電所事故調査委員会』のような、国会での国政調査の一環と位置付けるべきだ。」
と主張している。
 官僚組織が公然と国会を蹂躙するという、法の想定を超えた事件を、国会で決着をつけられず、司法に委ねるとなれば、今後も同じようなことが繰り返されるだろう。顔に唾を吐きかけられても手もあげない奴はナメられて当然だからである。国会議員は国民の代表として国会にいることを忘れないでもらいたい。
 一方で、文書を書き換えたのは、安倍政権の圧力に違いないと言った言説も見受けられる。たとえば、この役人の書いたブログでは、
「国家公務員は贈収賄を含む懲戒処分になるようなことをする人は皆無に近い」
と、まるで「官僚性善説」というしかない事を言っているが、何の根拠があってそう言っているのかわからない。では、裁量労働制についての厚生労働省のデータ隠しについてはどうなるのか?。
 あの時は、厚生労働省の出してきたデータに基づいて答弁をした安倍首相が恥をかいただけでなく、働き方改革の法案自体がガタガタになってしまったが、あれも政治家からの圧力だったとすれば、奇妙な話だ。
 日本の官僚が、政権の圧力に従うようなタマだろうか?。古くは、橋本龍太郎首相が経済財政諮問会議を立ち上げようとした時、官僚が「財政」の二文字を抜こうとした事もあった。官僚の権限への執着の凄まじさは、佐藤優もたびたび指摘している。彼らは政治家も国民も屁とも思っていない。
 むしろ、
「自己保身と組織防衛が行動原理の官僚は、バレないと思えば何でもやります。」
という、岸博幸意見の方に現実味があると思うが、どうだろうか?。
 政権の責任がどう転ぼうとも、財務省に重大な責任があることは動かさない事実である。しかし、今の野党とマスコミを見ていると、まるで、財務省の責任まで政権に転嫁しようとしているように見える。
 安倍政権は、どんなに長くてもあと2~3年のことなのに対して、財務省は未来永劫続く。財務省の体質をそのままに、安倍政権の退陣、あるいは、麻生財務相の辞任が、メインテーマだとすると、立憲民主党の行く末も予測できる気がする。
 予測をいえば、政治力学的に見ると、実質的な綱引きは、自民党財務省の間で行われているだけなので、この両者が落としどころを見つけるのだろう。野党とマスコミは騒ぐだけ騒いで得点を稼ぐ。バカを見るのは国民といういつもの結果になるだろうけれど、いずれにせよ、真相は明らかにしてほしい。