赤木俊夫氏の遺書

 今週の週刊文春は店頭から姿を消す勢いだそうだから、kindle版のリンクを張っておいた。
 たびたび書いているが、個人的には、小林信彦を読むために、週刊文春は販売日の朝に手に入れる。今回はびっくりするような記事に出くわした。
 と、ここでひとつ小ボケをはさんだりしている場合でもないだろう、赤木俊夫という、森友問題で財務省の文書改ざんに携わった官僚のひとりが、その後、検察の取り調べを苦にして自死した。その人が、事件のいきさつを書き残した遺書があった。その全文が掲載されている。
 記事を書いたのは、これも森友問題の扱いをめぐってNHKを退社することになった、NHKの元記者の相澤冬樹という人で、ほかでもない、その事情を知って、赤木さんの奥さんがコンタクトを取って来たのだそうだ。
 後から知ったことだそうだが、赤木さんの奥さんは、その遺書を公にして、旦那さんの後を追うつもりだったそうだが、相澤さんがあまりにいろめきたつので、鼻白んだのか、不審に思ったのかしらないが、ファーストコンタクトでは、遺書の公表も自死も思い直した。
 相澤氏は、しらずしらずにひとりのひとの自死を思いとどまらせたと、諧謔的に書いている。
 遺書の公表には、それから、一年以上の時間が経ってしまったわけだが、もし、森友問題がもっとほかほかだったときに公開されていたらどうなったかと夢想せぬではない。
 しかし、桜の会の問題でも、もう完全につんだ将棋盤の上で、しつこく駒を動かし続けるかのありさまなので、これがどうなってもどうともならなかったのかもしれないし、今度もどうにもならないのかもしれない。
 何度も言うように、それにつけても、民主党政権の体たらくがひどすぎた。国民に他の選択肢がないのだ。負けるのは仕方ない。信認を失って下野するのはしかたない。しかし、308議席も獲得しながら1週間であっさり公約をひっくり返すのはひどすぎる。あのとき、政権交代を成し遂げた選挙民に対して、背負わされた何かを意識していた政治家が民主党にどれだけいたのか。国民の政治への信頼を失わせてはいけないと考えていた政治家がいれば、今日、こういうことにはなっていなかったと思う。
 とくに、あの小沢一郎というやつは、東日本大震災のときに、東北選出の議員であるにもかかわらず、東京のマンションに引きこもって、ミネラルウォーターを買い占めていたのだ。思えば、これも週刊文春のスクープだったが。
 ともかく、民主党政権の覚悟のなさが、国民の政治に対する信頼を根こそぎにした。そのことが、安倍政権を長寿政権にしたといえるだろう。
 田原総一朗が、モリカケだけで、昔なら政権がつぶれたはずだと、どこかでつぶやいていた。そうでなくても、伊藤詩織さんの件だけでも、こともあろうに、総理大臣がレイプ事件のもみ消しに一枚かむ政権が、まともな国で政権の座に座り続けるだろうか。
 民主党の体たらくのために、国民が政治参画の手段を失ったと感じているのは事実だろう。れいわ新選組の躍進は、国民の危機感をよく表している。
 とりとめのない話になるのでこれでやめるが、安倍政権の支持率が如何に高かろうが、いずれにせよ、もうすぐ、ポスト安倍政権ということになる。そのとき、安倍政権よりましになっていると思える幸せな国民がどれほどいるだろうか。
 裁判に訴えた、赤木さんの奥さんと、安倍昭恵首相夫人のやらかしたことを比較すると、情けない気持ちになる。
 ただ、この森友問題は、ほんとに奇妙な事件で、誰一人得していないようなのだ。財務省の役人が勝手に気を回しすぎてひいきの引き倒しになったと、そういうことにしか見えないのだが、どういうことなんだろうか。民主主義が機能していない官僚国家の茶番としか見えない。茶番で人が死ぬのが官僚国家なのかもしれないし、どこまでも不毛な話。
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