『静かな大地』、風鈴市

knockeye2007-07-21

静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

静かな大地 (朝日文庫 い 38-5)

川崎大師の風鈴市。じつのところ、今年でまだ十年目だそうだが、なんとなく響きが歴史を感じさせる。みんなで黙っていれば「100年の伝統」くらい言ってもばれないだろう。
なんのことはない、川崎大師の境内で風鈴を売っているだけだが、梅雨明けも近いこの季節、やはり琴線にふれるものがある。夏の予感にはこころ浮き立つものがある。
わたくし、かつては、川崎市民だったので、ちょっとした里帰りだったりもする。住んでいたのは元住吉というところで、東急沿線であるようだ。ほとんど記憶に残っていない。多分行っても分からないだろう。子供のころ、半年住んだだけだし。
今回は横浜から京急で。
自分としては、朝出かけたつもりなのに、着いてみればとっくにお昼すぎ。夜勤明けの土曜はこんな風になりがち。しかも、オフの日は、あたまのスイッチも完全にオフになっていて、先日購入したキャノンS5 ISデビューのつもりが、SDがサンプルの32Mのまま。「あれ?」みたいな。
まあ、しかたないのだ。また、明日来てもいい。近いのだし、明日はホントに午前中にこれるだろう。
ラ・チッタデッラてふところにて、「伝説のフォトグラファー☆伝説のロックスター写真展」というのを覗いた。ロハだったので。ロックはわたしらの世代にとっては、一般教養である。で、ゼンゼン音楽を知らなくても、「ウッドストックのジミ・ヘンドリックス」とかいう写真は懐かしいのである。フランク・ザッパの顔を見てグルーチョマルクスを思い出してしまう程度の人であるが。
心惹かれたのは、インドのリシケシに滞在していたビートルズの写真で、ギターを膝に、ふとレンズに視線を向けたジョン・レノン。わたしらの知っているジョン・レノンの目は、メガネの奥でいつも疲れたような表情をしていないだろうか?あるいは、ちょっと皮肉っぽい挑戦的な表情か。それが、この写真はひどくまっすぐな視線で、どぎまぎしてしまった。
リシケシは瞑想の聖地なので、マスコミやカメラマンも一切入れなかったらしい。この写真を撮ったのは、世界を放浪中だったカナダ人で、この写真も撮ったまま30年もほうりっぱなしであったそうだ。ちょっと「ほんとかな?」と思ってしまうエピソードだけれど、信じてしまえるいい写真だった。
池澤夏樹の『静かな大地』を読み終わった。明治のはじめ、アイヌと共同で牧場を経営した人の話。実話で、主人公は作者の曽祖父の兄に当たる。キャッチコピー的なことをいわしてもらうと、アイヌモシリのロレンスだろうか。しかし、アイヌへの差別はひどすぎる。心ふたがる結末だが、物語のトーンは暗くなく、むしろ明治の男の気概を感じる。主人公に肩入れせず、事実をありのまま差し出しているのは、作者の力量だろう。
第三回親鸞賞受賞作。
短い人生、人に嫌がられながら、威張り散らして生きているやつもいるかと思えば、こういう生き方をする人もいる。倫理の基本は、いやだと思うヤツにならないことだろう。