「不正義」?

麻生政権になって、私たちが改めて学んだことは、バカに権力を持たせると、見境なくふりまわすということだ。
西川善文日本郵政社長の進退問題で、続投不認可を明言している鳩山邦夫総務大臣は5日閣議後の記者会見で
「辞任はしないし、認可もしない」
と解任覚悟で西川氏の続投を認めない考えをあらためて強調したそうである。
「政府が不正義に走るとは思っていない。首相を信じている。」
と述べたそうだ。
こうした鳩山邦夫の言動に対し、中川秀直名古屋市内で街頭演説し
「(鳩山邦夫は)信念をもって本気で西川さんの続投に反対している。このように主張するなら、堂々と内閣から去るべきだ」
郵政民営化は今、最大の危機を迎えている。鳩山氏が本当に本気で臨むなら、私も本気で戦う」
と対決姿勢を強調した。
かんぽの宿問題」についてはこのブログでも何度か取り上げたが、どのような意味でも、この問題を西川善文に責任を負わせるのはムチャクチャである。
グリーンピア問題と比較してみればよく分かる。問題のありようは全く同じである。というか、すべての公共事業の問題と同じといってもいい。
利益団体のために公金を使って不必要な工事をする。出来上がったものの運営団体に役人が天下りと渡りを繰り返して、退職金をふんだくっていく。最後には二束三文で売り払う。(ばれなければ永遠に売り払いさえしないのだ)そして、そのことすべてに国民の財産が垂れ流されていく。
こういう負の循環を断ち切るために、国民は郵政民営化を選択した。
つまり、かんぽの宿のような問題を二度と起こさないために、郵政事業を民間の手にゆだねたのである。
それをどういうわけで、郵政民営化のためにかんぽの宿問題が起こった、みたいな本末転倒した妄念が鳩山邦夫の頭の中でできあがったのか、全く理解できない。
しかも、あの男は西川氏の後任人事として旧郵政官僚を社長に据えようとした。
西川氏と旧郵政官僚と、かんぽの宿問題についてどちらが責任があるのか、どんなバカでもわかるはずだ。
鳩山邦夫がやっていることは、旧郵政官僚の既得権益確保のための使い走りにすぎない。
「政府が不正義に走るとは思っていない」
という言葉に彼の心理を看てとることができないだろうか。
普通は「不正」というはずのところを「不正義」というあまり耳馴れない言葉がでてくる心理はなんだろうか。
「不正」は「ことがら」につく言葉だ。「不正行為」「不正人事」「不正選挙」。はっきりと「不正」だと指摘できる問題があれば「不正」という言葉を使うだろう。
では、「不正義」は?
正直言ってそんな言葉は滅多に聞かない。普通「正義」の対義語は「悪」である。そして「正義とは何か」とか「悪とは何か」などという問題は宗教家や哲学者でもうかつに口にしない。
「正義」という言葉は、一般人が使う場合、多くは実体のないイメージである。
政治家が口にすれば、これほど胡散臭いものはない。
かんぽの宿問題」がマスコミで騒がれた初期のころ、鳩山邦夫が正義の味方みたいにもてはやされたことがあった。ネットの一部では、「次期総理に」みたいなことさえいわれていたのである。
つまり、こんどの「不正義」発言は、鳩山邦夫本人もけっこう悦にいっていた(もしくは今でも正義の味方のつもり)ということを示しているのだろう。