ココ・シャネル

Bunkamuraの映画館は,少し変わったシステムみたいで、インターネットでチケットを買う場合だけ、シートが指定できる。
私は今回たまたまネットで予約していったが、席に「指定席」なんてカバーがかけられていて、(なんかすいません)みたいな。料金は一緒なんですけどね。
映画「ココ・シャネル」は、シャーリー・マクレーンの風格だけでも、やっぱり観にいく価値がある。
「私は誰にも借りはないし、この世で私が感謝しなきゃならないのは私だけ。だから、店の名に『シャネル』を名乗れるのよ!」
この胸のすく啖呵が切れて、しかもサマになる女優がシャーリー・マクレーンのほかにいるだろうか。おもわず拍手しそうになってしまった。
孤児院出身のお針子から身を立て、女性のファッションを解放したココ・シャネルの人生はドラマチックだ。バルボラ・ボブローヴァも「アパートの鍵貸します」のころのシャーリー・マクレーンに負けず劣らぬ凛とした美貌で、若き日のココ・シャネルを魅力的に演じている。
自分たちと動物の違いを考えるとき、たぶん多くの人が、心があることと服を着ることだと思っているだろう。
心があることのほうは思い上がりに過ぎないが、服を着ることは間違いなく人間だけが行う生態行動である。
私たちの心は、肉体よりもずっと服に似ている。心は肉体よりも服に多く宿る。
ココ・シャネルがボーイのスカーフを見つけるシーンは、そのテーマをよく表している。あのとき、ココ・シャネル自身がはっきりと気づく。ココ・シャネルはココ・シャネルの服なのだと。
ココ・シャネルがカッコいいのは、彼女がァッションよりもスタイルを選んだからなのだろう。
覚悟なしにその選択はできない。