シスレー日和

knockeye2015-09-26

 永青文庫春画展に、初日じゃなくて二日目に出かけたのは、実は、同じ西武沿線にある、練馬区立美術館のアルフレッド・シスレー展と併せて訪ねようとしたからで、これが何故か日曜日から開催だった。
 ふつう土曜日からやりません?。美術館のサイトでこの日程を見た時は、わが目を疑ったけど、日曜日からっつうからしょうがないわな。
 練馬区立美術館に来ると、今でも思い出すのは佐伯祐三の展覧会。もう10年前なんだけど、中村橋駅の改札を出ると、まず佐伯祐三を思い出す。地元の人にしてみりゃ、変なことだろうな。
 この練馬区立美術館の学芸員さんは、たぶん変わった人だな。鹿島茂のコレクションから、バルビエ×ラブルールとか、中村宏とか、ひと味違う企画が多いです。
 今回のシスレー展も、ちょっと面白い視点でしたね。
 シスレーって言えば、印象派印象派、どまんなかの印象派で、印象派と言い切ってしまって良いものかどうか・・・とか、悩む必要のない、印象派としか言いようのない画家なんだ。
 この日、シスレー展に出かけたのも、すっごく天気が良かったから。秋晴れの空の色を見てると、これはシスレーだなって、シスレーはそういう画家です。シスレーの絵が100点とか、200点とか、ずらっと並んでたら、そりゃ壮観だと思う。
 20点しかないのは寂しいけど、そこは、創意工夫で、セーヌ川の治水の歴史を丹念に解説して、水上交通のために流れが穏やかにされたセーヌ川の川面が、印象派に与えた影響を論じてました。
 大雑把にいえば、水面が鏡のように風景を写す効果と、舟遊びの流行ですか。それはそれでありな企画と思うけど、シスレーの絵をもっとたくさん見たかったのがホンネ。
 ちょっと笑っちゃったのは、図録の袋に、そ知らぬ顔で新聞を入れて渡すの。思わず、「この新聞は?」と訊くと、「展覧会の記事があるので」と、ま、そう思ったけど、でも、オレ、その展覧会を今見たわけじゃないですか?。しかも、その図録を買ってるわけじゃないですか?。そこに、その紹介記事の新聞って要るか?。このギャグ、ちょっと気に入ったわ。しかも、見出しが「安保法案成立」だから。
 「安保法案成立」に関しては、週刊文春宮崎哲弥の分析が冷静だと思う。しかし、何度も言うように、現在の憲法は、日米安保と同時に成立している。戦争を否定したと言いつつ、実は、外交と防衛をアメリカに丸投げしただけ。その現実に今更気づいたのだとすれば、不明なだけだし、その現実を無視して、平和を自分たちで守ってきたかのように言うなら、それはただの欺瞞だ。 
 「戦争法案反対」なんていうのは、現実が見えていないだけでなく、そこには、現実を直視する意志すら感じない。こんなことが大きな運動になることに、むしろ、危うさを感じる。