「SLOWHAND at 70 LIVE at the ROYAL ALBERT HALL」

knockeye2015-10-31

 冬の先ぶれを思わせる寒い日だった。秋頃にはときどき、暦にピンでも打ちたくなる、こんな一日がある。こういう日をいくつか繰り返して、だんだん寒くなる。
 木曜日にオープンした、ららぽーと海老名に立ち寄ったあと、これもこの日リニューアルオープンした、町田の国際版画美術館を訪ねた。ほんとは夏オープンの予定が延期になっていた。ラッキーだったことには、初日ってことで無料だった。
 オープン企画は、それにふさわしく、所蔵名品展とのことだが、私の記憶では、もっと良いのがいっぱいあるだろう。もちろん、アルブレヒト・デューラー棟方志功やトマス・ショッター・ボイズが悪いと言うつもりはないが、月岡芳年とか、オットー・ディックスとかを観たかった。のは、もちろん、こっちの勝手な希望だ。ここは近いからこれからも訪ねる機会は多いだろう。芹が谷公園のプラタナスはもう葉が色づいていた。

 ほんとは、その足で桜木町に出て、横浜ブルク13で、エリック・クラプトンの「SLOWHAND at 70 LIVE at the ROYAL ALBERT HALL」を観る(コンサートなら聴くと書くべきだろうが、ま、映画なので)予定だったのだが、レイトショーってことを考えて、一旦、帰宅してコートを着た。
 ついでに余計なことを書いておくと、この「SLOWHAND」というクラプトンのあだ名は、「SLOW HAND CLAP」と「CLAPTON」をかけたシャレである。「SLOW HANDCLAP」は、客がダレたときにやる気のない拍手のことだが、もちろん、エリック・クラプトンのギターにそんなことをする客はいない。だからシャレになる。これは、本人がインタビューで語っていたので間違いない。こないだどこかの記事で変なこと書いてたので、ちょっと気になった。
 最近、この手の映画会社の戦略にどっぷりはまっている。言っちゃなんだけど、ただコンサートを録画しただけである。もっと言えば、もうすぐ売り出すDVDを映画館のスクリーンに映してるだけ。なのに、料金は割引きおことわりの2,200円。「そうだけど?。文句あんなら観なきゃいいじゃない?。」とでも言いたげな、にやけた顏が目に浮かばぬではない。それでいて、けっこうな客の入りだった。
 11時前には桜木町駅のホームにいた。奇しくも、世間はハロウィンとか。正直言って、この日がハロウィンだって知ったのは、前日のバナナムーンGOLDで、バナナマンのふたりがそう言ってたからなんで、つまり、知ってからまだ24時間たってない。それも、この日と言ったって、10月31日のことなのか、10月の最終日曜のことなのか、イマイチはっきりしない。バナナマンだって、去年の秋には「ハロウィンっていつ頃だっけ?」みたいなこと言ってたのだ。
 それにしても、今年は例年になく盛り上がってるのではないか?。昔なら、この時間帯に血だらけになっているのは、酔っ払いと決まっていたものだったが、今年はみんなメイクみたい(もしかしたら、ほんとに血だらけの酔っ払いがいたのかも知れないが、ハロウィンだと紛れてわからない)。これは横浜から流れてきたのか、それとも、あとでニュースで知ったけど、大盛り上がりだったと聞く、渋谷の早退組なのか。
 渋谷は毎週が仮装パーティーみたいなものだから、ハロウィンてふお題を頂ければ、みんなそんな格好で繰り出すには何の抵抗もないだろう。良くも悪くも、今も昔も、都会ってそんな場所なのだ。米朝師匠が、話していたことがあるが、上方の色街には、昔、「おばけ」といわれる風習があったそうだ。年寄りが若い格好、若い女は年寄に化ける。「あれなんか復活させたらおもろいように思いますけどな」と言っていた。
 思いがどんどん古い話に遡っていく感もあるが、黒木華がベルリンで賞を獲った、山田洋次の「小さいおうち」に描かれていた、南京陥落の日の、東京でのお祭り騒ぎを、ふと思い出した。いま、歴史を俯瞰して、その日、南京で何があった知っている私たちから見れば、その日の、帝都東京の華やぎは、まさに「悪夢」だが、そんな悪夢は、今だって日常に起こっている。誰も鳥の目を持たないだけ。例えば、今も、渋谷がハロウィンで盛り上がっている、その同じ頃(私がエリック・クラプトンを聴いている、その同じ頃でもあるわけだが)、沖縄では、キャンプ・シュワブの前で、抗議行動が続いている。悪夢かもしれない。しかし、そんなものかもしれない。
 沖縄の問題に対して、政府の対応がとてつもなく拙劣なのは間違いない。しかし、沖縄の側の対応もわかりにくいのも確かだろう。今の沖縄県知事の翁長雄志という人、県議時代、また、那覇市長の時には、辺野古移転に賛成していた。反対が一貫していないので、どこか訴えてくるものがない。政府がうまく対応できていないだけだと見える。
 それに、いったん賛成していたものを今さら反対に回るからには、何か対案があるべきではないか。瀬戸際でちゃぶ台をひっ繰り返したように見えてもしかたない。
 個人的意見としては、鳩山由紀夫が、国外移転を公約に掲げて、選挙に圧勝した、あの時以外に、基地問題を解決するチャンスはなかったと思う。というのは、選挙に勝ってるんだから。つまり、国民の信任を得ているわけで、あの時点で、アメリカも、少なくとも、オバマは、ある程度の妥協は覚悟していたはずである。民主主義国家で、選挙ではっきりと国民の意思が示されたわけだから。
 だから、あとは、鳩山由紀夫バラク・オバマのトップふたりが膝詰めで決めるべきことだった。にもかかわらず、鳩山由紀夫という人は、防衛省の役人なんかに言いくるめられてる。あの時点で全てが終わった。
 あの時は、私も民主党に票を入れた。沖縄の基地は、グアムかテニソンに移転すればよいと思った。テニソンの知事が来日さえした。選挙民の意思を軽んじたのは、民主党であり、鳩山由紀夫であり、小沢一郎だった。選挙民の意思をドブに捨てた、あの時点で民主党は死んだ。次は無いと思う。
 現時点では、一貫して辺野古移転である、自民党に理がある。私は反対だった。しかし、308議席も獲得した、主権者の代表が、役人に言いくるめられて、公約を蔑ろにしてはどうしようもない。今はせめて、現政権が、政治的にまっとうな決着をつけてくれることを望むだけである。