小泉純一郎の呪縛

knockeye2009-02-05

 こないだ「ハッピーフライト」を見に行ったシネマート六本木は、ちょっと背後に警戒しながら男子トイレに入る感じの映画館だった。なんとなくだけど。
 小林信彦が紹介する映画や小説は、まず、はずれがない。それに、その紹介記事そのものの文章がいい。その点は信頼しているけれど、映画や小説の紹介記事のミソは、その内容にふれずに面白さを伝えるところにある。
 小林信彦の文章が、ときどき政治に及ぶときがあるが、そのときもこれと同じ手法を使っているということに気が付いた。
 政治に触れる場合は、「小泉は嫌いだ」と言うにしても、なぜ嫌いかは説明しておかないと、読者としても何の判断材料にもならない。
 ただ、小林信彦のファンは、多分、誰も彼に政治的な判断を求めていないだろうと思う。著者の名前だけで本を買って損をしない数少ない作家のひとりである。
 麻生太郎は「郵政民営化を見直す時が来た」と発言したらしい。
それについては、二回選挙をやって、二回とも国民が賛成したでしょう。見直すなら民意を問えよ。
 だいたい、世界恐慌のさなかに、取り上げなければならないほどの問題ではないはずなのだ。おそらく与野党ともに小泉純一郎の呪縛から抜け切れないのだろう。 
 小泉純一郎にとって、郵政民営化は「戦術」にすぎなかったはずだ。その戦術の背後にビジョンが見えていたからこそ、国民は支持したのである。
 選挙が近いというのに、与党も野党も自分たちのビジョンを掲げない。そして、三代前の元首相の戦術に拘泥している。
 小泉純一郎を超える存在感のある政治家が、与党にも野党にもいないという証明なのかもしれない。