資産課税という提案

knockeye2012-01-18

消費増税では財政再建できない ?「国債破綻」回避へのシナリオ

消費増税では財政再建できない ?「国債破綻」回避へのシナリオ

 
野田佳彦が消費税増税をあせるのは、国債暴落の影におびえるからだろう’と、昨日書いたが、おそらくは、「‘財務官僚がちらつかせる’国債暴落の影」と書くべきだったろう。
 国債暴落を避けなければならないのは当然のことだが、そのために求められるのは、財政の健全化へ道筋を付けることだ。 
 ‘消費税増税’と書くから‘税収が増える’ような気になってしまうが、じつのところは‘消費税率が倍増する’だけなので、税率が上がって、その分消費が冷え込めば、財政の健全化はおぼつかない。
 事実、橋本政権下、消費税率が3%から5%に引き上げられたときも、2年後には大幅な税収減になったと漏れ聞いている。一昨日の記事で「税収を安定的に増やすには消費税増税しかない。」という田原総一朗の一文に疑問を呈したのもこのことが頭にあったからだった。
 1月19日付のダイヤモンドオンラインに
「消費税率の引き上げで財政再建ができるか?」
という野口悠紀雄のコラムがあり、消費税が増税された場合のシミュレーション計算が掲載された。

 どこかで見たことがあるなと思ったら、去年、菅直人が消費税増税を目論んだときに、野口悠紀雄自身がまったく同じ指摘をしている。

 野田政権はまるで菅政権の再演である。座付き作家が変わらないので、うけないギャグを繰り返す。
 計算によると、消費税増税の効果は二年しか持たず、その後はまた、国債残高が膨らみ続ける。
 しかし、専門家の指摘を待つまでもなく、消費税率を上げれば、経済全体の規模を縮小させるのは疑いようもない。経済全体を成長させる手を打たないまま、税率だけを上げることは、民間の取り分を減らして、官僚の取り分を増やすという意味でしかない。にもかかわらず、そもそも現在の財政破綻を招いた行政の構造改革には全く手を付けないつもりでいるのだから、それで、財政再建などできるわけもない。
 財政の健全化に王道はないと思う。野田佳彦自身がかつて言っていたように、税金に群がる‘シロアリ’の行政を、‘働きアリ’の行政へ変えていくしかないはずである。
 税制の改革については、以下の提案がもっとも説得力があるように私は思う。

今後の課税対象をフローでなくストックに転換することを目指して、資産課税の準備をするべきだ。国税の範囲内で現在存在するのは、ストックそのものを課税標準にする資産税ではなく、資産所得を課税標準にするフロー課税である。これを大きく転換する必要がある。

 日本は世界で最も高齢化が進んでいるのだから、外国の税制は参考にならないのである。

 これらを考慮した新しい税制は、今のすべての税をいったん廃止して、付加価値税と資産課税の二つだけにする、というのがわたしのたどり着いた結論だ。

21世紀にはフローではなく、ストック、つまり資産に税金をかければいい。それが著しい経済成長を終えた老体国に合った税金のシステムだ。

 野口悠紀雄大前研一、いつも必ずしも意見が一致するわけではないふたりが、別のルートを辿って、「フローからストックへ」という結論を導き出し「資産課税」を提案している。
 すくなくとも、消費税増税よりは、はるかに傾聴に値する提案だと思う。