
- 作者: カズオイシグロ
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/04/22
- メディア: 単行本
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主人公のおだやかな語り口の中に、最初から少しずつ紛れ込んでくる違和感。ほんとに第1ページ目からひっかかってくる。「?」という感じ。この冒頭の違和感は、なんとなく村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』に似ているなとちょっと思った。「あれ?これはもしかしたらそっち方向に進もうとしていませんか?」という疑念がちらりと浮かぶんだけど、どんどん読み進んでいってしまう。作者に手を引っ張られて作品世界に引きずり込まれた気がした。同時代の出来事として書かれているところも恐ろしい。
週刊文春のブックレビューとミステリーレビューの両方で紹介されていることからわかるように、(なかんずくミステリーレビューの池上冬樹はこの作品に満点をつけている)あまり内容に触れるわけにはいかない。ともあれ、この作品に何らかの共感を感じない人は信用できない気がする。どんなにうまい酒を覚えたとしても、水道から直接飲んだ水を旨いと思ったことがない人を信用できるだろうか?
なんだかよく分からないことを口走っているが、とにかく読んでみるに如くはなし。