硫黄島からの手紙

わたしが週刊文春を買うのは、小林信彦のコラムを読むためだが、今週のはすばらしい。
クリント・イーストウッドの『父親たちの星条旗』を見た日の日記には「いくら巨匠イーストウッドとはいえ、硫黄島を日本側から描くのは難しいのではないかと思う。」と書いた。そう思ったのはわたしだけではないはずだ。日本は特殊な国だとわたしたちは思い込んでいる。なんといってもわたしたち自身がこの国の実体がどんなものなのかよく分からない。
しかし、クリント・イーストウッドという人は、そういう定説にごまかされない。人の心を見る時に視座がぶれない。これは並大抵のことではない。
と、こういうことがたった2ページのコラムで分かってしまう。これが小林信彦のすごいところだ。前にも書いたが、小林信彦は人を褒めるのがとてもうまい。たぶん、ほれ込むのだと思う。だから横山やすしみたいにほれ込んでもほれ込みきれないような人物を描くと、すばらしい小説がうまれる。
今週のコラムを読んで『硫黄島からの手紙』はぜひ見たくなった。