日の移ろい

日の移ろい

日の移ろい

川村記念美術館にでかけた翌日、なぜか分からないけれど一日中眠ってしまった。疲れていたのだろうけれど、ちょっとショックで、その余韻もあり、今日もどこにも出かけずに暮らした。
それで読みかけの本を読み終えたのだけれど、それが、島尾敏雄であるべきだったかどうかは、疑問の余地がある。
あとがきに、「鬱そのものが主人公」という意味のことが書かれている。何かが起きそうで何も起きない。そもそも小説とも、随筆ともいえない。ただの日記だし、どこまでも内面に向かっていく著者の目は、この本の内容を痩せ細らせている。
しかし、どういうわけか面白くて読んでしまった。奄美大島の図書館分館室長という舞台立てが、まず、よい。それに、奥さんが魅力的。私小説で今でも読む気がするものは、たいがい奥さんが魅力的なものだ。尾崎一雄とか。金子光晴のは私小説というのかどうか知らないけれど。
オリジナリティーがあるものは何でも面白いともいえる。「そういえば、島尾敏雄ってこんな感じだったよなぁ」と、読み進む途中で思い出した。何を読んだのか忘れたけれど、特攻に赴く前の宙ぶらりんな状態を描いたものだった。特攻の体験が著者の心に影を落としていないはずはない。にもかかわらず、それが主題ではないことが、この著者の生来の潔癖さではないだろうか。
明日はどうしようか。連休最後の日だが、関東地方、この連休はあいにくの雨が続いている。