菅直人ぶれる

チャンスはだれにでもめぐってくるというが、そのチャンスを生かせる人はほんとに少ないんだろう。
振り返ってみれば、小沢一郎にとっては、この鳩山政権がラストチャンスだったろうと思う。
鳩山由紀夫ほどに小沢一郎を支えた人がかつていたか。
その鳩山由紀夫をあのような形で退陣に追い込んでしまう、その無能(というか、異能)をまざまざと見せ付けられたあとに、一体誰が小沢一郎と組もうとするだろうか。すくなくとも有能な人間はもう寄り付かないだろう。
たとえ、菅直人参院選で惨敗したとしても、小沢一郎へ流れが戻ることはもうないだろう。
こういうことを書くのも、菅直人の雲行きがだいぶ怪しくなってきたから。
消費税増税にふれるのはいいとして、明らかにまずいと思う点がいくつかある。
ひとつめは、10%という数字がとつぜんでてきたこと。
財政の健全化のためには綿密なスキームが必要なはずで、その過程で消費税の増税もありえますというのでなければ、へたをすれば、重税になるは、借金は増えるは、という結末にもなりかねない。
ふたつめは、「自民党の案を参考にして」というくだり。
自分で考えろということ。
おそらくは、増税の批判が民主党に集まることを避けるための詭弁だと思うが、政権党としての責任がまったく感じられない。大げさじゃなく、政党政治の否定だと思う。
みっつめは、「超党派で議論したい」というくだり。
そういうことを言い出すと、じゃあ、国会は何のためにあるの?ということになる。国民に選出された国会議員の自覚すらなくしてしまっているのではないかと思ってしまう。
よっつめは、低所得者には全額還付するみたいなことを言い出したことで、まだ、上げるかどうかも決まってないはずなのに、どうしてそんな細目に踏み込んでしまうのか。
これについては、自民党の谷垣総裁が
「基本設計ができていないからぶれる」
と批判したそうだが、まったくそのとおりなんで、本来なら今はまだ
「財政健全化のために消費税の増税も選択肢の一つです」
としかいえないはずなのに、それがどんどん枝葉の議論に踏み込んでいってしまうのは、シナリオを書いているのが財務省の役人だからということなんだろう。
こう考えていくと、経済財政諮問会議をつぶしてしまったのがやはり大きな間違いだと思う。
あれがつぶれて、財務省の役人が雀躍りしたのはまちがいない。
もちろん、そのかわりに作った国家戦略局がちゃんと機能しているなら問題ない。
しかし、そこでやってるあの事業仕分けというのが、財務省主導だという批判はつねにある。
どうも民主党には、国の全体像を視野に入れて、未来の設計図を描ける人材がいないみたいだ。
このまえ、「第三の道に行きたければ行けばいいけど、地図は持ったの?」と書いたのは、半分は冗談だったのだけれど、民主党という政党にはうかつに冗談もいえない。
ところで、先日、観にいった「ハーツ・アンド・マインズ」と「ウインター・ソルジャー」は日本初公開なのだそうだった。
日本人は、文字通り「目を背けて」きたんだなと思う。
その結果が、「小泉竹中のせいで、日本が格差社会になった」とかいう「はぁ?」な連中じゃないだろうか。
もちろん、人が二人いればそこに格差は生まれる。しかし、格差があるから不幸だというわけじゃない。
それに、世界の現実を見れば、日本が一握りのめぐまれた国なのはまちがいない。
その国に暮らして、ちょっと差があるからって、何が「格差社会」だよ。