『冬の旅』

knockeye2014-04-07

冬の旅

冬の旅

シューベルト:歌曲集「冬の旅」

シューベルト:歌曲集「冬の旅」

 辻原登の『冬の旅』。
 フィッシャー・ディスカウの歌う、シューベルトの歌曲集「冬の旅」廉価版CDを、いつ手に入れたのか、持っている。魚津に住んでいる頃は、冬になると必ず聴いた。雪に閉ざされた夜なんかに、あれを聴くと雰囲気が出る。北陸は冬の重たさが違う。
 辻原登阪神淡路大震災を描いた小説では、『ジャスミン』が最高によかった。
 今回の主人公は、ちょっと不運すぎて笑っちゃう。売れない芸人みたいな。
 自分が男だからか、鳥海さんがセクシー。「わたしはあんたがおもてるような女やないよ」ていうセリフだけど、この歳になってわかるけど、女がそういうときって、つまり「お前じゃ物足りない」つていう意味なんだな。
 辻原登は和歌山の出なので、冬の旅っていっても、シューベルトとはだいぶ違う。和歌山の冬は明るい、とくに、海辺は。
 関西在住のころは、お正月休みに、淡路島経由で和歌山に渡って、川湯温泉によくキャンプに行った。たしか大塔林道とかは雪なんだけど、南高梅とかはもう花盛り、ていう記憶があるな。
 これからこの国全体が下降していくと思うんだけど、きれいに下降していきたいな。みっともない落ち方はいやだな。田舎もんみたいなの一番やなんだ、ああいうヘイトスピーチとか。
 辻原登の長編は、やっぱり、『ジャスミン』と『遊動亭円木』だな。今回のは何だろう?。伊藤整賞は受賞してるし、ラストはよいんだけど、もうちょっとコントラストが欲しかった気がする。もうひとキャラクターというか。
 SNSの時代だけど、人の孤独はあんまり変わらない。でも、時代に合わせて、孤独の表現を変えなきゃいけないていう、作家にとってはめんどくさい時代かも。
 思い出したけど、『許されざる者』買ったままで読んでないわ。引っ越しの時に重なったから。