神々はもはやなく

knockeye2014-05-28

 マルグリット・ユルスナールが、フロベールの書簡集のなかに見いだした、忘れがたい一句、
キケロからマルクス・アウレリウスまでのあいだ、神々はもはやなく、キリストはいまだない、ひとり人間のみが在る比類なき時期があった」。
 先日のポール・マッカートニーのライヴを観たあと、私はこの言葉を思い出した。そんな晴れた朝みたいな一時期が、案外、あったのではないか、あのころ、愚かな戦争を引き起こした神々が死に絶え、息を吹き返すまでのあいだ、神々もキリストもいない、ひとりビートルズのみがあった時代が。
 世界がビートルズを共有していたことをこそ忘れるべきでないと思う。