夏らしい展覧会をいくつか

 あんまり大きく話題にはなっていないけど、日本の夏らしい気分になれる展覧会をいくつか紹介したい。 
 ひとつめは、太田記念美術館と戸栗美術館が共同で企画している「青のある暮らし」。
 今気が付いたけど、太田記念美術館の方はもう期間がおわってる。戸栗美術館の方は九月22日までやってますね。
 戸栗美術館がコレクションを誇る蛸唐草は、この季節むき。目に涼やかで、波の音が聞こえそう。
 戸栗美術館も、太田記念美術館とおなじく、図録に熱心ではないみたいで、この美術館の所蔵品の中でも、ひときわ目を引く≪横綱土俵入り文大皿≫の画像が、図録にも載ってないし、ポストカードにもなっていない。幕末の作品らしく、そんなに古いとまで言えないし、派手すぎてシロウト好みにすぎるのかもしれない。でも、一見の価値ありだと思います。

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戸栗美術館

 戸栗美術館で染付の実物を見た後、太田記念美術館の浮世絵を見ると、片隅に描かれている食器や植木鉢なんかもリアルに見えてくる。

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太田記念美術館

 といわれても、会期がすぎてちゃしょうがないので、そのかわりに横浜そごう美術館で「令和元年記念 北斎展」とめいうって葛飾北斎の「富嶽三十六景」と「富嶽百景」の全148点を全品リクリエイトしたたユニークな展覧会はいかがでしょう。

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横浜そごう美術館

 そごう美術館と福岡伸一が組んでリクリエイトしたのは、フェルメールに続いて2度目かな。フェルメール作品全37点リクリエイトはインパクトがあった。でもそれは、オリジナルが1点ずつしかないからなんで、北斎の方は、もとが版画なんで、もともとリクリエイトっちゃリクリエイトなんだし、刷りの違うステートが何点もありますしね。
 でも、≪富嶽百景≫の小さな画面が大きく引き伸ばされて展示されていたのは面白かった。

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富嶽百景 霧中の不二 葛飾北斎
 富嶽三十六景については、
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富嶽三十六景 紅嫌い
こんな風に「紅ぎらい」といって、青だけか、寒色だけで刷られているバージョンがけっこうあって、おそらく、いわゆる「赤富士」≪凱風快晴≫以外はすべて「紅嫌い」でいいんじゃないかと夢想したりもする。
 しかし、戸栗美術館のある渋谷から、横浜に来る前に、ちょっと井の頭線駒場東大前に寄り道して日本民藝館の「食の器」をおすすめしたい。
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日本民藝館

 日本民藝館もまあ図録を作らない。今回の食の器は、器もそうだけど、青のある暮らしということでいえば、庄内被衣(かつぎ)といわれる藍染の晴れ着の藍色の豊かさに圧倒された。
 ちなみに、被衣というのは、私の理解では、襟のところがフードになってる着物のこと。これは、東京国立博物館で観たことがある。だけど、被衣として別にあつらえなくても、頭から被るように使った着物は被衣と呼んだようで「よそいきの晴れ着」くらいの意味で使っている場合もあるのかもしれない。
 それと、菓子型といって、たぶん「落雁」を作るのに使った木製の型がいっぱい展示されていて、陰刻として面白いと思った。金型なら簡単に思えるのだけれど、そうじゃなくて「木」だから。
 もう一つ目玉は浅川巧が著書で紹介した、朝鮮の膳の数々。ほんとに、美術ファンの人たちは朝鮮にいいイメージしかなかったはずなんだが、どうしちゃったんでしょうね、最近の韓国は。