『号泣する準備はできていた』

号泣する準備はできていた (新潮文庫)

号泣する準備はできていた (新潮文庫)

 江國香織直木賞を受賞した短編集。
 短編集と知らずに読み始めたので、最初の一編が終わった時点で「おや?」と思った。もしかしたら短編かと。
 全部読み終わった感想としては「短編感ないわぁ」ってこと。でも、それはなぜなんだろうと不思議。ルシア・ベルリンとどこが違うんだろうと。
 ルシア・ベルリンの短編って、たぶんどれも実体験でしょう。だからかどこかある人の人生の一部って感じがする。ある日のこの人って感じ。全部じゃなくて、こんなときもありました、か、こんなこともありましたって感じ。
 でも、チェーホフアリス・マンローレイモンド・カーヴァーとかは、実体験じゃないだろうけど、圧倒的に短編っぽいか。
 素材に対する包丁の入れかたかな。アリス・マンローの「トリック」って小説が好きなんだけど、あの小説は、ある女性のあるときに、こんなことがありました、それから、十何年経ちました、そして、こんなことがありました、「え!」っていう。
 でも、江國香織のは、そういうことじゃないみたい。短いながら長編みたい。まだ続きがありますけど、ここで辞めときます、みたいな。
 で、最初は何だろうな、と思ってたけど、そういうのをたくさん並べて読んでみると、そういうのがたくさん並んだ長編小説を読んだような気分になった。これはこれで面白い。