『小説家の映画』ネタバレ

小説家の映画
小説家の映画』ネタバレ

 上のポストカードは何とか特典でもらったヤツだけど、ポスターに使われてるシーンが本編に出てきたときは笑った。

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 窓の外のあの子が、演出なのか、通りがかりなのかだけど、どう思います?。
 通りがかりだと思いますね。あの子だけカメラ目線だもん。しかも、いったんいなくなった後また来るし。 
 だけど、偶然だとするとタイミングが良すぎはする。女優と小説家が、フィクションと現実のかかわりについて、その曖昧さについて話しているところに、たまたま現実とフィクションのこんがらがりが起こるなんて。もし偶然なら奇跡。
 それと、小説家が作った映画らしい映像に出てくるオバさん。キム・ミニと公園をぶらぶらしてるオバさん。あれが実は小説家なんだとしたら、最初からの映像は全部が小説家の映画ってことになるし、あるいはその逆ってことになる。でもそれは私の見間違いであれは最初に出てくる書店主さんなのかもしれない。どう見えました?。
 この小説家の映画について、スタッフとして関わった学生さんの感想が面白い。正確には憶えてないけど、「ユニークだよ」「見る価値ある」「君なら気にいると思うよ」とか。
 映画評としてよく聞くけど、その前に小説家が語るプロットと考え合わせても、何なら、この小説家が語る映画論を考えても、そりゃもうそんな感想になるしかないだろうと思われる。試写から出てきたキム・ミニの顔も味がある。キム・ミニひとりしかいない試写なので、初号試写というのかどうか知らないけど、ホントの最初の試写なんだろう。
 「小説家の映画」というこのタイトルはつまり、「武家の商法」といった含みを持たせているんでしよう。だけど、それがこの小説家の言う通り、商業的な映画に比べて面白くないのかと訊かれると、確かに、そうとも言いかねる。
 そういった「映画を撮りたい」という初動の欲求みたいなところを、タワーで出会った映画監督の携帯していた小さなカメラを覗かしてもらうシーンが上手く捉えている。あそこからこの小説家の映画が始まったのかもしれない。
 書けなくなった(枯れた?)小説家が出会い頭で映画を撮ってしまう。そんな風に存在してしまう映画のおかしみ。園子温監督の『地獄でなぜ悪い?』とか、三谷幸喜監督の『ザ・マジックアワー』とかをホン・サンス風に洗練して描くとこうなるのかな。
 推測だが『クレアのカメラ』って2016年の作品で、ホン・サンスがやったことをメタ的に捉えていると思う。あの映画は、カンヌ映画祭で出会ったイザベル・ユペールとキム・ミニとホン・サンスで、その場で即興的に作った映画で「金返せ!」的なレビューもあった。
 今振り返ると、あの中でイザベル・ユペールの演じるクレアは「写真を撮ると、撮られた人は別人になる」と信じている。その感覚があの映画よりもこの映画の方がむしろ重層的に表現できている。というか、そんな風に映画を撮る自分を突き放して捉えている。
 2022年・第72回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員大賞)を受賞している。3年連続4度目だそうです。


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