『ポルトガル、夏の終わり』ネタバレ有り〼

 しかしながら、もし、この週末に観た映画のどちらをお薦めするかと訊かれたら、そりゃまあ、『ポルトガル、夏の終わり』である。
 イザベル・ユペールは、いま、なんと言ってもフランスを代表する大女優だろう。追っかけてるわけではないが、今まで観たこの人の映画でハズレくじを引いたことはない。今回の映画は、それだけでなく風格を感じさせた。
 それはひとつには、女優を演じているからだと思う。彼女が演じている主人公フランキーは、癌が再発して死期を悟った女優で、家族や友人を集めて最後の休暇を過ごそうとしている。ダメ息子に結婚相手を探したいという隠れた思いもあるらしい。性別が逆転しているけれど、小津安二郎の『晩春』の笠智衆である。
 監督は、『人生は小説よりも奇なり』のアイラ・サックス。

人生は小説よりも奇なり(字幕版)

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  • 発売日: 2016/08/07
  • メディア: Prime Video

 イザベル・ユペールは、この映画を観てアイラ・サックスに熱烈ラブコールをしたらしい。『人生は小説より奇なり』にも出演しているマリサ・トメイが、主人公の仕事仲間、アメリカのヘアメイク役を演じている。フランキーは、彼女を息子の嫁に迎えられればと期待している。しかし、アイリーン(マリサ・トメイの演じる)は、アメリカ人の恋人を伴ってきていた。
 この恋人を演じているのは『恋愛小説家』とか、近くは『ブリグズビー・ベア』に出ていたグレッグ・ギニア。この恋人は撮影監督をしていて、やたらと『スター・ウォーズ』に参加してるって言う、あの感じは何なんだろうとおかしかった。あれが『アベンジャーズ』だとそもそもアイリーンの彼氏になりそうにないのか、『スター・ウォーズ』って言葉が喚起するアメリカのイメージが今でも何かあるかなぁと思った。
 ポルトガル世界遺産の街シントラがもうひとりの主役と言える。特に、ラストのロングショットは奇跡的に美しい。それが絵として美しいだけでなく映画のラストシーンとして美しい。
 「ここではなくもしNYだったら・・・」と、アイリーンが語るシーンがある。ほんとにそうだなとおもった。
 ネタバレを懼れなきゃならないかもしれない閾に入ってきた。ので、少し行を開ける。まだ観てないひとは読まない方がいいと思います。

 アイリーンとジミーが湧水を飲むシーンがある。一緒にじゃなく、まだお互いに出会う前に、別々にだけれども、あの湧水のいわれは、この映画の創作なのかどうか、検索してみたけどわからなかった。ブログの旅行記なんかには、映画と同じ湧水が出てくるけれど、それについての伝説は特に記されていないので、たぶん創作なんじゃないかと思う。
 これの何がネタバレなのかわからないかもしれないけど、ラストにつながるみごとな伏線だった。ラストまで観て「ウワォ!」と思う。そして、あの美しいロングショットですからね。
 わたくしは、あまりラストを重くみないタイプの観客なんですけど、ラストシーンがみごとに決まるならそれに越したことはないなと思いました。

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