映画『映像研には手を出すな!』

 先日「スマホネイティブ」の話をしたが、私はその世代ではない。しかし、「スマホネイティブ」より「アニメネイティブ」の歴史ははるかに古い。私自身は、アニメやマンガとははるか昔に切れているが、それでも自分がアニメネイティブであることは否定しようがない。つまり、ハッキリとテイストがあって、いくら世情でよいといわれていても嫌いなものは嫌い。そして、いくら長く離れていても好きな作品に出会うと、アニメという文体に戸惑うことなく楽しめる。
 『映像研には手を出すな』の主役をつとめた乃木坂46の3人も、もちろん「アニメネイティブ」に違いない。というか、彼女らの存在自体が、そのイメージのオリジナルをアニメの世界に持っているに違いない。彼女らは、彼女らのドキュメンタリーよりはるかに自然に、アニメのキャラクターを演じられるはずなのだ。
 監督の英勉は『あさひなぐ』で乃木坂46と組んだこともある。私はそれは観なかったけれども、バナナマンの設楽統(公式お兄ちゃん)が、「マンガそのものみたいだった」みたいなことをラジオで言っていたのを憶えている。今回の主演のひとり齋藤飛鳥は、『あさひなぐ』の舞台化を主演している。
 英勉の映画では、『前田建設ファンタジー営業部』を観た。あれはまず、おぎやはぎの小木さんを観に行ったのだし、ヨーロッパ企画上田誠のシナリオが目当てだった。上田誠の原作、脚本で、本広克行が監督した『曲がれ!スプーン』が好きだったので期待したのであった。
 小木博明は良かったし、スマッシュヒットだったと思うが、原作が、実際の建設会社のウェブサイトだったということもあり(そこがおもしろポイントなんだが)、ファンタジーに振り切れなかったという感触だった。むしろ、そういう原作をなんとか映画化するって時に、上田誠にシナリオを依頼したセンスは大したもんだと思ったし、今回の『映像研には手を出すな!』を観て、英勉を監督に起用したのも大したもんだったんだと再確認した。
 アニメの実写化に当たっては、アニメファンからいろいろ言われるものであるらしい。おそらく彼らには映画の方のテイストがないんだと思う。今回どういう評価なのか知らないが、私としてはGOOD。
 最初のところ、色温度を抑えて雨が降ってて、なんか『羅生門』みたいな始まりなんだけど、独特の世界観への導入としても上手いし、のちの伏線にもなっている。
 アニメを映画化するのは、小説を映画化するより難しいと思う。イメージをイメージに変換するわけだから。完全に解体して組み直すしかない。
 失敗例を挙げれば数限りない。成功例としては、私が観た中では、三池崇史監督の『ヤッターマン』、フィリップ・ラショー監督・主演の『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。羽住英一郎監督の『ワイルド7』。
 でも、そのくらいしか思いつかない。のに、今回はそれに肩を並べるくらい。
 乃木坂46の人たちって、こういうゾーンで力を発揮できるんだと思って。アイドルといえば「壁ドン映画」みたいな発想しかできない作り手が悪いんで、ハマれば飛べるよってことなんだと思う。スターなんだね。


9.25(金)公開 映画『映像研には手を出すな!』本予告第二弾【公式】

ワイルド7

ワイルド7

  • 発売日: 2014/05/01
  • メディア: Prime Video

eiga.com